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さく

さく(咲く、裂く、割く)[saku]

◯「さく(咲く)」は[sak]と[u]からなり、[sak]は「栄ゆ[sak-ayu]」や「盛る[sak-aru]」の[sak]と同根。内にこもった命の力の活動が頂きに達し、勢いよく外に向かって開くこと。

◆力が充満しいままさにはじけ出ようとする、という意味が根底にある。[sak]はさらに、[su]と[aki]に由来するのではないかと考えられる。[aki]は実りそのものであり、その実りをまさにもたらす([su])ということが基層の意味である。つまり、力が充満しいままさにはじけ出ようとする、という意味が根底にある。

※タミル語<akai>に起源(なし〜s 対応)。タミル語では「栄える、芽を吹く、燃える、起きる」の意。

※『古典基礎語辞典』では「サク(裂く)は『名義抄』によるアクセントが違うので別語。」とある。今日でも、関西地方では「咲く」は「−−」であり、「裂く」は「\/」とそれぞれ高低をかえている。しかし、タミル語では「サク(裂く)」もまたタミル語<akai>に起源(なし〜s 対応)であり、タミル語では「破れる、裂く」の意とされる。

また籠もった力が殻を打ち破り咲くのであるから、「咲く」に「裂く」の意がある。『名義抄』が成立した十一〜十二世紀には、この二つを区別しようとして、アクセントが変わってきていた。したがって、もとは同語であったが、後にアクセントを区別したと考えられる。

▼「咲く」。 ◇『日本書紀』大化五年三月・歌謡「もとごとに花は左該(サケ)ども」 ◇『万葉集』四三一四「時ごとに咲かむ花をし見つつ偲はむ」 ◇『万葉集』三九〇四「咲きの盛りは惜しきものなり」

▽波頭が白く立つという比喩も古くからある。 ◇『万葉集』三五五一「あぢかまの潟に咲く波平瀬にも紐解くものかかなしを置きて」

▼「裂く」。 ◇『塗籠本伊勢物語』三八「うへのきぬの肩を張りさきてけり」 ◇『私聚百因縁集』六・五「此れは太子の為母后の胸を却(サク)」

▽目尻などを裂いて入墨をする。 ◇『古事記』中・歌謡「胡恟子(あめ)鶺鴒(つつ)千鳥ま鵐(しとと)何ど佐祁(サケ)る利目(とめ)」

▽人と人との仲を隔てる。 ◇「夫婦の間を裂く」 ◇『頼政集』下「夢にも中をさくと思はん」

▼「割く」。一部を分けて他にあてる。 ◇「時間を割く」 ◇『日本書紀』継体六年一二月(前田本訓)「抑由有り。縦(も)し削(サイ)て他に賜はば、本の区域に違ひなむ」