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つち

つち(土)[tuti]

◯[tu]は「て(手)[te]」の行為、[ti]は[tu]を可能にするものなので、[tu]のくりかえしとしての[tutu]を可能にするものとしての「土」「大地」が基層の意味である。[tutu]は「…しつつ」などにあるように行為の継続を意味する。

◆人が働くところとしての「土」。記紀神話では「天(あめ)」に対して「国(くに)」が対の言葉として用いられる。 ◇『日本書紀』推古八年二月「天に神まします。土に天皇有します」

その後、時代が下がり万葉集のころには「天土(あめつち)」と熟した言葉もある。 さらに、中古以降、「土」は支配に組み込まれた民のことを、支配するものとしての天との対に用いられるようになった。また、土は醜いものとされ、「土を塗ったようだ」とも用いられた。さらに、平安期になると清涼殿に上がることを認められていない、いわゆる「地下」を「土」というようにもなる。

▼大地。地面。地上。 ◇『万葉集』八〇〇「天(あめ)へ行かば汝がまにまに、土(つち)ならば 大君います」 ◇『竹取物語』「大空より人、雲に乗りて下り来て、つちより五尺ばかり上りたる程に、立ち列ねたり」 ◇『堤中納言物語』よしなしごと「てんぢくの山、にはとりのみねのいはやにまれ、こもり侍らむ。それもなほつち近し」

▽泥、土壤。 ◇『枕草子』二三六「屐子(けいし)のつややかなるが歯につちおほくつきたるをはきて」 ◇『宇津保物語』藤原の君「つちをまろがしてこれを仏といはば、御みあかしたてまつり」

▼醜いことのたとえ。 ◇『源氏物語』蜻蛉「ここら、よき人を、見あつむれど、(女一宮に)似るべくもあらざりけり、と(薫は)おぼゆ。御前なる人は、まことにつちなどの心地ぞするを」