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いう

【いう(言う)】[iu]←[ifu]

■ことを声を出して言い、ことばとしてこの世界にあらわす。

※タミル語<[cepp-u>(c〜なし、e〜i、pp〜f 対応)。

ことことばにすること。ことを分節して切りとり、そのようにしてつかまれたことをあらわして「現実のもの」とする行為。「現実のもの」の形態は、音声としての言葉、書き言葉を主要なものとして、多様であるが、基本は音声としての言葉、である。その音声の記録の形態が多様である。言葉は言うという行為がなければ、現実には存在しえない。

▼言葉として表現する。「のべる(述べる)」よりは一般的で用法は広く、「呼ぶ、名づける、称する、世間の人が口にする、うたう、言い寄る」などに展開する。
◇『古事記』上・歌謡「泣かじとは汝(な)は伊布(イフ)とも」
◇『万葉集』四三六四「家の妹がなるべきことを伊波(イハ)ず来ぬかも」
◇『万葉集』三三七九「わが背子をあどかも伊波(イハ)む」
◇『万葉集』八九七「重き馬荷に表荷(うはに)打つと伊布(イフ)ことの如」
◇『古今集』仮名序「歌をいひてぞ、なぐさめける」
◇『竹取物語』「其中になほいひけるは色好といはるる限五人」
◇本のことを英語で何というのか。

▼行為としての「言う」に重点がある場合はいわゆる自動詞になる。ただし、日本語の自動詞他動詞は言葉に内在的な構造によって定まるものではない。
◇『蜻蛉物語』中「あやしき声するを、こはなにぞととひたれば、鹿のいふなりといふ」(日本語では動物の鳴き声、虫の鳴き声、ものの音などを「言葉」としてつかむ)
◇風で戸がガタガタいう。
◇遠慮なく言ってください。(「何か」を言うことであるが、その何かが聞く側からはまだ明確になっていないから、「自動詞」のように対象を明確にせず用いられる)

▼(助詞「と」に付いて)「と」の受ける「こと」の内容を明示し、それに関して下に述べる場合に用いる。 ◇『万葉集』四三〇七「秋と伊閇(イヘ)ば心そ痛き」
◇神が存在するということを信じない。(この用例では「という」がなくても意味は通じる。「という」をおくことによって「こと」が明示され強調される。)



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