up 上: 定義集

のべる

【のべる(伸べる、延べる、述べる)】[noberu]←「のぶ[nobu]」

■心がものをつかみ、そのもののことを言葉にすること。陳述し論証を展開すること。

※タミル語<nuval>に起源。

◆曲がったり巻いたりしているものを広げ、あるいは固まっているもの引っ張って、長くすること。さらに、時間の延長が大きくなることへと、意味が拡がった。

▼「述べる」考えたことを言葉にして外に広げ展開すること。

◇『落窪物語』三「さればいとことわりなり。のべ聞えさすべき事も侍らず」(言い訳する)
◇意見(祝辞)を述べる。

※「言う」は一般的に言葉を発することであるが、「述べる」は心の働きとしてなされることが含意される。したがって、「意見を言う」は意見することの目的意識性が低く、「意見を述べる」が自己の見解を披瀝する\item が明確になる。よってまた「祝辞を言う」は「祝辞を述べる」に比べておざなりな言い方であることになる。

◇指名されて仕方なく「意見を言う」。みずからの考えを「述べる」。

▼「伸べる、延べる」

※現代日本語では「伸べる、伸ばす」は「曲がったり巻いたりしているもの広げ長くすること」、「延べる、延ばす」は「固まっているもの引っ張って長くすること」と区別するときに漢字によって使い分ける。

▽空間的に広げる。

◇『法華義疏長保四年点』二「之を舒(ノフル)ときは則、長さ五尺なり」
◇『天理本金剛般若経集験記平安初期点』「手を曳(ノヘ)て挽(ひ)き起すに」
◇床を延べる。
◇『太平記』一五「三密瑜伽の道場を構へ、一代説教の法席を展(ノベ)給ひけり」
◇膠(にかわ)をのべる

▽時間的に広げる。

◇『枕草子』四〇「よはひをのぶる歯固めの具」
◇『源氏物語』蜻蛉「日をのべてもさる事はする物を」

▽「心をのべる」の用法で、のびのびとさせる。くつろがせる。

◇『源氏物語』総角「げに、ふるごとぞ、人の心をのぶるたよりなりけるを」


Aozora Gakuen