next up previous
次: かたる 上: 構造日本語 前: かた(方)

かた(型)

【かた(型、形、像、固、硬、堅、難)】[kata]←[koto]

■[ka]は「はらから(同胞)」や「やから(輩)」の[ka]に残っているが、食をともにする集団、協同体を意味する。[ta]は「手」であるから、[kata]は「協同の手」が基層の意味である。無秩序であった集団が目的をもって一つにまとまること、これが「型」の原義である。

□タミル語<katan>起源。

◆漢字をもちいて意味を分化させているが、すべて、混沌とし茫漠とした状態のなかに何かのものが明確に分節され形成されるとき、そのものの変化の諸側面を表すという共通の意味がある。語源的にも同根である。

一定の形式をもちゆるがないものの構えが「型、形、像」に、ゆるがないという状態を表すとき、「固、硬、堅」に、「分節され形成される」ことの難しさから「難い」が(「『固、硬、堅』が分解し難い」からともいえる)、それぞれ分化した。

▼形=分節されたものの具体的なありさま。 ◇『日本書紀』雄略四年八月・歌謡「汝(な)が柯徃(カタ)は置かむ蜻蛉島大和(あきづしまやまと)」 ◇『落窪物語』三「白銀を筆のかたに作りて」 ◇『古今集』二九三「御屏風に竜田川にもみぢながれたるかたをかけりけるを」 ◇『日本書紀』天武一〇年八月(北野本訓)「多禰嶋に使人等を遣して、多禰国の図(カタ)を貢る」 ◇『源氏物語』須磨「所せく集ひ馬・車の、かたもなくさびしきに」

▼型=いくつかの形の共通性を取り出し示す。 ◇『宇治拾遺物語』四九八「したうづのかたをとりにおこせて侍りければ」 ◇古い型を破る。 ◇柔道の型 ◇血液型、新しい型の自動車

▼像(兆)=動物の骨を焼いて占うときに現れるひび割れの形。 ◇『万葉集』三四八八「告(の)らぬ妹が名可多(カタ)に出でむかも」

▼堅・硬・固=もののかたちが明確で変化することがない、というものの性質を示す。心が確定していて動揺しない、融通がきかない、などに意味が展開した。 ◇『源氏物語』行幸「かたきいはほも」 ◇かたい約束、かたく信じる。 ◇『日本書紀』雄略一二年一〇月・歌謡「大君に柯墟倶(カクタ)仕へ奉(まつ)らむと」 ◇そんなかたい事を言わなくてもいいではないか。 ◇かたく口止めされる。 ◇『枕草子』八七「さはれ、さまでなくとも、いひそめてんことはとて、かたうあらがひつ」 ◇『古事記』下・歌謡「秀(ほだり)取り加多久(カタク)取らせ」 ◇口がかたい。かたい顔つき、かたい文字。彼の力をもってすれば、合格はかたい。かたい商売

▼難=むずかしい。容易でない。困難だ。 ◇『万葉集』三四〇一「中麻奈(なかまな)に浮き居る船の漕ぎ出なば逢ふこと可多思(カタシ)」 ◇『古今集』四四三「ありとみてたのむぞかたき」 ◇『源氏物語』帚木「御覧じ所あらむこそかたく侍らめ」



Aozora Gakuen