next up previous
次: あけ 上: 構造日本語 前: あう

あき(秋)

【あき(秋)】[aki]

■[aki]の[a]は主体を表し、[k]は食[ku]う行為を表す。したがって[ak]は人が食うことに関するさまざまの言葉の根幹をなす。[i]は「いる」、あるいはその状態になることを意味する。

[ak]は、赤、明け、空き、商い、などに共通する。赤は何より秋の色であり、長い耕作の時期が「明ける」時としての秋であり、収穫物のやりとりとしての「商い」なのである。

◆人に食うことをもたらすとき、つまり収穫の秋である。

※したがってまた、「秋」と書いて、「ふさわしい時期。時宜。ちょうどその時。また、そうしなくてはならない時期、時間」を表す。

▼四季の一つ。旧暦ではほぼ七月から九月、今日ではほぼ九月から一一月まで、天文学的には秋分から冬至まで、二四節気では立秋から立冬までをいう。太陽が次第に南下するため、昼は短く、夜は長くなる。

五穀がみのり、大気が澄む季節。草木の紅葉、落葉などで、物の哀れの身にしむ季節と感じるのは、貴族の感傷が定着した。万葉集には秋を悲しい季節と歌う歌はない。古今集以降の宮廷和歌からである。 ◇『万葉集』一九七二「野辺みれば撫子の花咲きにけりわが待つ秋は近づくらしも」 ◇『万葉集』三六一九「またもあひ見む秋加多麻気弖(カタマケテ)」「秋かたまけて」は「秋が近づいて。また、秋になるのを待ち受けて」の意。 ◇『古今集』二一五「鳴く鹿の声聞くときぞ秋はかなしき」」

▽収穫、みのり ◇浄瑠璃『烏帽子折』道行「諸国のあきをつみのせて」

-【秋津島】(古くは「あきづしま」)

■[akitu]は[aki]つまり収穫を[tu]つまり作る島。島は一定のかぎられたところ。海でかぎられたところ。

◆実り豊かな所。

※「あきづ」は古くは大和国葛上郡室村(奈良県御所市室)あたりの地名で、それが次第に広い地域を示すようになり、やがて日本全体をさすようになったともいわれる。「あきづ」という地名は奈良県吉野郡吉野町宮滝付近一帯の上代、吉野離宮のあった所にもあり、「実り豊かなところ」という普通名詞がもとである。

▼大和の国、また、広く日本の国の古称。あきつしまね。あきつくに。やしま。「日本書紀」に神武天皇が国見のとき「蜻蛉のとなめせるがごと」といったことに由来するといわれている。しかし、「蜻蛉(あきつ)」つまりトンボの古称自体が「秋の虫」からきているので日本書紀の地名説話は「あきづ」を説明することにはならない。



Aozora Gakuen