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かいきゅう

【かいきゅう(階級)】 二十一世紀初頭の今日「階級」という考え方は一般的ではない。二十世紀末まで「階級」は普通の名詞であった。つまり階級という方法で世界をとらえるものの見方が、考え方の枠組みとして支配的であった。それが世紀末の十年ほどで急速に力を失った。それはこの考え方のもとで二十世紀に行われたすべての革命と変革が崩壊してしまったこと、これが最大の要因である。

しかしにもかわらず事実として階級は存在する。 「新石器革命」を経て成立した社会は分業を土台にしていた。分業は、さちをこの世界から直接に受けとるものと、そのさちを個々の生産者から奪いとって独占して蓄積し、それを資本として新たな生産を組織するものの、二つの立場を生みだした。それぞれの立場を「階級」という。人間が自ら生産を組織することによってはじめて、社会というものが成立した。

このような二つの階級への分裂は、今日大きく二つの形態をとる。

一つは一国内の分裂である。日本国もまた現前と階級が存在する社会である。「階級」と「階級構造」が日本国の社会の仕組みとして存在し機能している。日本はれっきとした階級社会である。この事実を知らなければならない。このような分裂は、アメリカ帝国主義本国でも明確である。「格差」、「勝ち組、負け組」という言葉が日本国で用いられる。これらの言葉は、階級の問題としてとらえることをさまたげ、問題を個人の能力や親の地位の結果としてとらえることによって、階級の支配を覆い隠すように働いている。

もう一つはこの世界の分裂である。二十世紀末の世界の飢餓人口は約8億4000万人、毎日飢餓と貧困で2万5000人が死亡する、これが世界である。アメリカ帝国主義とその同盟者である「先進資本主義国家」は市場経済主義と大域主義を掲げて世界中のさちを奪い尽くしている。一方には組織され蓄積された力がある。高度な情報網と交通網が機能し、食べることに困らない食糧が常に配備され直接の生産に携わることなくそれを手にれることができる。一方にでは、世界と直接向き合い協働して幾ばくかのさちを得て生きる人々がいる。社会の制度が少しでも停滞すれば、たちまちに飢餓が襲う。さちは圧倒的な外からの力によって奪い去られる。このような世界に多くの人々が住む。

これが今日の世界である。まさに社会は階級に分裂した社会である。この分裂は今日の世界の混迷の根源である。

今日の社会は、物質万能主義と拝金主義、自由競争という名の弱肉強食、精神の荒廃と人間性の喪失の世界である。世界はそのとおりではないか。宇宙は核で支配され、地球は有害物質で汚染され、山川草木の自然破壊は極限状態になり、人間の心も拝金主義で毒され、親子、兄弟でも財産で殺しあい、家庭の崩壊と少年犯罪は史上最高になった。民族間の対立と抗争と民族戦争、地域紛争と宗教戦争、麻薬戦争と暴力抗争、殺人犯罪とテロ活動、難民の流浪とホームレス、アフリカの疲弊と極限的な飢餓である。これは実質的には新しい形の貧困化そのものである。

階級は事実として存在しこの社会の内部で本質的な要因として機能している。



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