【労働(ろうどう)】人間が人間の維持(つまり一定の文化水準における自己と家族の生存)に必要なものを自然界から得るために、手・足・頭脳などによって協同して組織的に働くこと。近代は「人」を「言葉をもって協同して労働する生命体」として再発見した。人として意味のある動きをすることを意味する「はたらく」ことが、人をして人間とする人間の本質なのだと発見されたとき、それを「労働」という。
したがって、本来労働は人間の生命の輝きであり、人間の自己実現であった。しかし、資本主義の市場経済のもとでこの輝きは覆われている。市場において売買されるのは「労働力」であり、その人間を再生産するだけの「殺さず、生かさず」の価格でなされる。そしてその労働が労働力の市場価格よりもはるかに大きい価値を生み出す。これが資本主義の搾取の機構である。職があればあったで働くことは苦しみであり、職を失えば失ったでたちまち路頭に迷う。これが現代の労働の悲惨な姿である。人間の自己を実現する労働と資本主義市場のもとでの労働力との分裂を発見し、その分裂を維持再生産する機構としての「貨幣」の意味を発見したのがマルクスである。