◯外にあることや、ものの話題を持ちだす。
※タミル語<otu>由来。
◆話者が、話者と聞き手の外にあることを、話題として取り立てて指示する。目的をもって意図して話題とする。内にあってすでによく知ってることは「このように」と持ちだす。
※「友と会う」と「友に会う」。「春となる」と「春になる」。それぞれ、「と」は「他でもない」の意まで含む目的性がある。それに対して「に」は一つに状況の実現として他動的であり、その実現を喜ぶことを含意する場合が多い。
〔格助〕 ▼「言う」「思う」「聞く」「知る」「見る」などの内容にあたることを引用する。あるいは「と言っている」のように、引用部分を略する用法もある。 ◇『古事記』下・歌謡「宮人の足結の小鈴落ちにき登(ト)宮人響(とよ)む里人もゆめ」 ◇『万葉集』九六「み薦刈る信濃の真弓わが引かば貴人(うまひと)さびていないと言わむかも」 ◇『源氏物語』夕顔「『口惜しの花の契りや、一房折りてまゐれ』と、のたまへば、この押し上げたる門に入りて折る」 ◇「彼は元気でいるときいた」
▼体言、または、体言と同資格の語句を承け、それが同種の語句に対して並立関係にあることを示す。 ◇『万葉集』八二六「うちなびく春の柳等(ト)我がやどの梅の花等(ト)をいかにか別かむ」 ◇『徒然草』六六「柴の枝、梅の枝、つぼみたるとちりたるとにつく」 ◇「赤と青で塗り分ける」
▼連用関係を表すもの。共同の相手を表す。…とともに。 ◇『古事記』下・歌謡「倉梯山は嶮しけど妹登(ト)登れば嶮しくもあらず」 ◇『源氏物語』若紫「人々は帰したまひて、惟光朝臣とのぞきたまへば、ただ西面にしも、持仏すゑたてまつりて行ふ、尼なりけり」 ◇「彼らとともに力をあわす」
▼体言を承けてその状態を表し、動作を修飾する。体言を承けた場合、比喩的修飾となることがある。 ◇『万葉集』二〇四「神ながら神等(ト)いませば」 ◇『万葉集』一八三五「今更に雪降らめやもあぎろひの燃ゆる春べと◇『万葉集』三〇八六「なかなかに人跡(ト)あらずは桑子にもならましものを」 ◇『源氏物語』紅葉賀「こまこまとかたらひ聞え給へば」 ◇『今昔物語』‐二五・一「相馬の郡の大井の津を京の大津とす」 ◇「今日からここを居場所としよう」
▼例える内容を示し、比喩や比較の基準を表す。 ◇『伊勢物語』一二四「我とひとしき人しなければ」 ◇『源氏物語』玉鬘「『かたちなどはかのむかしの夕顔とおとらじや』などとのたまへば」
〔接続〕
▼(自立語化したもの)前の事柄に引き続いて、後の事柄が生じることを示す。すると。
◇『平家物語』一〇「王命といひ、武命といひ、君につかへ、世に従ふ法のがれがたくして」
◇『竹取物語』「いまはむかし、たけとりの翁といふもの有けり」
◇『古今集』四九「ことしより春しりそむる桜花ちるといふ事はならはざらなん」
◇『蜻蛉物語』中「ながされたまひて三日といふに」
◇「今日という今日」
◇「店という店には客があふれている」
◇「お前という男は」