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のぶ

のぶ(伸ぶ、延ぶ、述ぶ)[nobu]

◯言葉をつらねて話すことで心が解きひろがること。そこから、ま(間)があき、広く、ゆっくりとなること。

※タミル語<nuval>由来。

◆曲がったり巻いたりしているもの広げ、あるいは固まっているもの引っ張って、間を空け、広く、また長くすること。

※古語ではいわゆる自動詞も他動詞も「のぶ」であった。現代日本語では「のびる、のばす、のべる」と送り方での区別がある。

▼空間について。 ※「伸びる(伸ばす)」は「曲がったり巻いたりしているものが(を)広く長くなる(する)こと」、「延びる(延ばす)」は「固まっているものが(を)広がる(広げる)こと」と、漢字によって使い分け区別する。

▽広く、長くなる。曲がっていたものがまっすぐになる。 ◇『源氏物語』総角「例の見たてまつる皺のぶる心地して」 ◇『天理本金剛般若経集験記平安初期点』「手を曳(ノヘ)て挽(ひ)き起すに」 ◇「膠(にかわ)をのべる」 ▽たたんでいたものをひろげる。 ◇『法華義疏長保四年点』二「之を舒(ノフル)ときは則、長さ五尺なり」 ◇『太平記』一五「三密瑜伽の道場を構へ、一代説教の法席を展(ノベ)給ひけり」 ◇『平家物語』宇治川先陣「腹帯ののびてみえそうぞ。締め給へ」 ◇「床を延べる」 ▽背が高くなる。 ▽逃げて遠くへ行く。 ◇『平治物語』「この雪にいかでのび給ふべき」 ◇「逃げのびる」

▼時間について。 ▽寿命がのびる。 ◇『源氏物語』野分「限りあらむ命のほども、いますこしは必ずのびなむかし」 ◇『枕草子』四〇「よはひをのぶる歯固めの具」 ▽延期になる。 ◇『源氏物語』梅枝「御参りのびぬるを、宮にも心もとながらせたまへば」 ◇『源氏物語』蜻蛉「日をのべてもさる事はする物を」

▼心について ▽「息をのべる」の用法で、ほっとする。 ◇『徒然草』「しのこしたるをさて打ち置きたるは、面白く、いきのぶるわざなり」 ▽「心をのべる」の用法で、のびのびとさせる。くつろがせる。 ◇『万葉集』一八八二「春の野に心伸べむと思うどち来し今日の日は暮れずもあらぬか」 ◇『源氏物語』総角「三月の十日ほどなれば、空もうららかにて、人の心ものび、おもしろきをりなるに」 ◇『源氏物語』総角「げに、ふるごとぞ、人の心をのぶるたよりなりけるを」

▼言葉について。 ▽言葉をつなぎならべて詳しく言う。 ◇『栄花物語』二六「歌は心をのぶといひて、をかしきにも、めでたきにも、あはれなるにも、さまざまの人のまづ詠み給ものなめれば」 ◇「意見(祝辞)を述べる」 ◇『落窪物語』三「さればいとことわりなり。のべ聞えさすべき事も侍らず」(言い訳する)



2014-10-08