◯「いき」があたりを「おおう(覆う)」さま。
◆「もの」の発する「いき(生き)[生命力・活力]」が辺りを覆っていく、そのありさま。
※勢いあることは生命力の盛んなことであり、生産の盛んなことであり、価値であった。勢いのあることが徳であり、社会的な支配力であった。稲の生長する勢いに価値を見いだす考え方である。
▼いのちあふれる様。 ◇『日本書紀』「是に生磐宿ネ軍を進めて逆(さか)撃つ。胆気(イキホヒ)益壮にして、向かふ所皆破る」 ◇『日本書紀』神代上「伊弉諾尊、功(こと)既に至りぬ。徳(イキホヒ)亦大(をほ)いなり」 ◇『伊勢物語』四〇「人の子なれば、まだ心いきおひなかりければ、とどむるいきおひなし」 ◇『源氏物語』帚木「上手はいと(筆の)いきほひことに、わろ者は及ばぬところ多かめる」
▼力や動きが盛んである。 ◇『源氏物語』東屋「なほなほしき(平凡な)あたりとも言わず、いきほひにひかされて、よき若人ども集ひ ◇火(雨・風)の勢い。 ◇勢いよく燃える。 ◇すごい勢いで走る。 ◇日の出の勢い。
▼ものがすすんでゆく動き、その様子。情勢。なりゆき。
◇『源氏物語』少女「おほかた世揺りて、ところせき御いそぎのいきほひなり」
◇みんな逃げ出しかねない勢い。
◇勢いに乗ずる。
◇酔った勢いで言う。
◇酒の勢いで思わぬ口論になった。
◇提案した者が、勢いその計画の責任者となった。