◆もとは神のすむ「あめ」に対し人の住む地上としての「くに」であったが、「あめ」が空間としての天を意味するようになるとその対語は「つち」になる。そして「くに」は何らかのことで画された人の住む所を意味するようになる。
▼天(あめ)や海に対して、大地。土地。陸地。 ◇『日本書紀』神代上「次に国雅(わか)くし浮きし脂の如くして、くらげなすただよへる時」 ◇『日本書紀』神代上(水戸本訓)「故、六合(クニ)の内(うち)、常闇(とこやみ)にして」
▼画された人の住む所 ▽一つの区域をなした土地の称。 ◇『万葉集』八六五「君をまつ松浦の浦の少女らは常世の久爾(クニ)の海人(あま)少女かも」
▽国家。国土。地球上の各政府の統治権下にある土地。また、特に日本国をいう。 ◇『日本書紀』歌謡「大和は国のまほろば たたなずく青垣 山こもれる 大和しうるはし」 ◇『日本書紀』仁徳五〇年三月五日・歌謡「汝こそは区珥(クニ)の長人」
▽日本の行政上の一区画をなした土地の称。 ◇『古事記』上・歌謡「八島久爾(やしまクニ)」
▽生国。郷里。故郷。 ◇「国元」 ◇「国にいる父母」 ◇『古事記』下・歌謡「くろざやのまさづ子吾妹(こわぎも)玖邇(クニ)へ下らす」
▽為政者の位。また、天皇の政務。 ◇「国譲り」 ◇「国とる」 ◇「国去る」
▽国府。また、国司による政治。 ◇『竹取物語』「国に告げたれども国の司、参で訪(とぶら)ふ」
▽任国。領国。知行所。
◇『宇津保物語』藤原の君「くに一を賜はらんと申す」