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数学的帰納法はすべて,
何らかの自然数を含む命題がすべてので成立することを示すのだ.
その命題が複合命題
であるときを考える.
例題 1.12
とする. 個の実数
は
をみたしている.
このとき,
がなり立つことを示せ.
考え方
この問題の と
は本来,
出題者の与えた定数であり,固定されている.
しかし,ここで証明すべきことを次のような命題にする.
解答
次の命題を示せばよい.
とする. 個の実数
が,条件
をみたすならば,
不等式
がなり立つ.
これを数学的帰納法で示す.
- のとき.
ここで
ならば
よりつねに成立.
- のとき成立するとする. のとき
ここで
とすると である.
個の数
に対して
帰納法の仮定を使うと
次に のときになり立つので
あわせて
- したがって一般に のときに題意が示された.□
個の実数の条件
,
と,
条件
がある.これからつくられた自然数に関する条件
を考え,すべての自然数 に対して条件が成立することを示す.
このようにしておくと,数学的帰納法の仮定が,
個別の に対して仮定されるのではなく,
条件を満たす任意の に対して仮定されるので,
証明がずっとやりやすくなる.
「証明すべきことを強める」とか「個数に関する数学的帰納法」
とかいろいろ呼ばれる.
基本は自然数を含む命題の成立を,
についての数学的帰納法で示すのである.
個別の とはいっても文字 であるから,
もともとの命題そのものを強めた意味で
解釈することもできる.
要はどのような数学的帰納法をしているのか,明確に押さえることである.
例題 1.13
[97東京工大改題]
を自然数, を正の有理数とする.このとき,
をみたす自然数の
の組
の個数は有限であることを示せ.
考え方
個の未知数とある与えられた有理数 に関する命題,
を証明するのに,これを
に証明内容を拡大し,数学的帰納法を適用する.
解答
「未知数の個数が であるかぎり,
任意の有理数 について,解の個数が有限個である」
ことを数学的帰納法で証明する.
まず,任意の有理数 に対して
をみたす自然数の の組
で
となるものの個数が有限であることを数学的帰納法で示す.
- のとき.
なら解なしなので、有限個であることは成立する.
とする.
という形をしているときは,
より のみが解である.解の個数は1.
が自然数の逆数という形をしていないときは解なし.
いずれにせよ解の個数は有限である.
- のとき成立するとする.
であるから
よって
となりこれを満たす整数
の個数は有限である.
これを
とする.各 に対し
は未知数の個数が 個なので帰納法の仮定により解の個数は有限である.
のそれぞれについて言えるので,
のときも解の個数は有限である.
- 従って自然数 に対して
をみたす自然数の の組
で
となるものの個数が有限であることが示された.
つぎに
という仮定をとる.
するとそれらを並べ替えたものが解になる.その個数は 個がすべて異なるとき 倍され,
同じものを含むときは より小さい.いずれにせよ,
という仮定をとると,解の個数は高々有限数倍されるだけである.
従って,題意の有限性が証明された.□
このように, 以外にも定数などがある場合に,証明することを強めることによって,
帰納法がかえってうまくできることが少なくない.
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