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対偶を示す


例題 1.14       [出典不明]

$a,\ b,\ c$ は同時には0でない実数とする. $a,\ b,\ c$に関する条件

\begin{displaymath}
ax+by+cz>0\ なる任意の\ x,\ y ,\ z\ に対し\ x+y+z>0\ が成り立つ
\end{displaymath}

と, 条件 $a=b=c>0$ は同値であることを示せ.


考え方     二つの方向の証明の一方で対偶を示す方が簡明になるところがある. 同値性を証明すべき二つの命題を明確にし, それぞれの証明を対偶を示すことでおこなう可能性を念頭に検証しよう.

解答     条件「$ax+by+cz>0$ なる任意の $x,\ y,\ z$ に対し $x+y+z>0$が成り立つ」を $P$とし,条件 $a=b=c>0$$Q$とする. $P\Rightarrow Q$をその対偶を示すことで示す.

条件 $Q$ の否定は

\begin{displaymath}
a \ne b ,\ b \ne c,\ c \ne a,\ a=b=c \le 0
\end{displaymath}

のいずれかが成り立つことである.
  1. $a \ne b$ のとき.

    \begin{displaymath}
x=a-b,\ y=b-a,\ z=0
\end{displaymath}

    とすると

    \begin{displaymath}
ax+by+cz=a(a-b)+b(b-a)=(a-b)^2>0
\end{displaymath}

    であるが $x+y+z=0$ となる.つまり反例ができたので

    \begin{displaymath}
ax+by+cz>0\ なる任意の\ x,\ y ,\ z\ に対し\ x+y+z>0\ が成り立つ
\end{displaymath}

    が否定された.
  2. $b \ne c,\ c \ne a$ のときも同様.
  3. $a=b=c \le 0$ のとき.

    \begin{displaymath}
ax+by+cz>0 より a(x+y+z)>0.a \le 0 より x+y+z<0
\end{displaymath}

    つまりすべての場合に

    \begin{displaymath}
ax+by+cz>0\ なる任意の\ x,\ y ,\ z\ に対し\ x+y+z>0\ が成り立つ
\end{displaymath}

    は成立しない.
よって対偶 $\overline{Q} \Rightarrow \overline{P}$が示せたので, $P\Rightarrow Q$ が証明された.

逆に $Q$ が成り立つとき, $ax+by+c=a(x+y+z)$,かつ$a>0$なので, $ax+by+cz>0$ならば$x+y+z>0$となり,$P$が成り立つ.

以上から,条件$P$と条件$Q$が同値であることが示された. □



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