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定数の範囲で式が変わる

これらを例題で考えながら,確認していこう.

例題 1.1       [00京大文系前期]

$a$ を実数とする. $x$ の二次方程式

\begin{displaymath}
x^2-ax=2 \int_0^1\vert t^2-at\vert\,dt
\end{displaymath}

$0 \le x \le 1$ の範囲にいくつの解をもつか.

考え方         まず右辺の定積分を計算しなければならない. 被積分関数に絶対値がある. 絶対値記号はそれ自身場合分けで定義される記号だ.つまり

\begin{displaymath}
\vert a\vert=\left\{
\begin{array}{ll}
a&(a\ge 0)\\
-a&(a<0)
\end{array}\right.
\end{displaymath}

したがって次の所からはじめることになる.

解答

\begin{displaymath}
\vert t^2-at\vert=\left\{
\begin{array}{ll}
t^2-at&(t^2-at\ge 0)\\
-t^2+at&(t^2-at<0)
\end{array}\right.
\end{displaymath}

である.一方,積分域は $0\le t \le 1$ である.$t$ がこの範囲を動くとき, 途中で$t^2-at$の符号が変わるか変わらないかは$a$の範囲によって決まる. $a$の範囲によって積分計算は次のように区間に分けねばならない.

\begin{displaymath}
2\int_0^1\vert t^2-at\vert\,dt=
\left\{
\begin{array}{ll}
...
...style 2\int_0^1(-t^2+at)\,dt &(1<a のとき)
\end{array}\right.
\end{displaymath}

である.

注意    

  1. このように場合分けではまず場合分けを済ますことが大切だ. 上の一つ一つについて,その場で計算する人もいるが, 先に全体の場合分けを済ますこと.
  2. $a$の範囲の境界での等号はいずれにつけてもよい. 境界ではいずれの式で計算しても同じ値になる.

積分を計算して

\begin{displaymath}
2\int_0^1\vert t^2-at\vert\,dt=
\left\{
\begin{array}{ll}
...
...\displaystyle a-\dfrac{2}{3} &(1<a のとき)
\end{array}\right.
\end{displaymath}

となる. そこで,

\begin{displaymath}
f(x)=x^2-ax-2\int_0^1\vert t^2-at\vert\,dt
\end{displaymath}

とおく. 区間$0 \le x \le 1$の端の値$f(0),\ f(1)$の符号を調べる.
  1. $a \le 0$ のとき

    \begin{eqnarray*}
f(0)&=&- \left(-a+\dfrac{2}{3} \right)
=a-\dfrac{2}{3}<0\\
f(1)&=&1-a- \left(-a+\dfrac{2}{3} \right)
=\dfrac{1}{3}>0
\end{eqnarray*}

    よって $0 \le x \le 1$ における解は1個.
  2. $0<a \le 1$ のとき

    \begin{eqnarray*}
f(0)&=&- \left(\dfrac{2}{3}a^3-a+\dfrac{2}{3} \right)
=-\dfr...
...rac{2}{3} \right)
=-\dfrac{2}{3}\left( a^3-\dfrac{1}{2}\right)
\end{eqnarray*}

    よってこの場合はさらに場合分けされる.$f(1)$ の値が0以上なら1個,0未満なら0個である.

    \begin{displaymath}
\left\{
\begin{array}{ll}
1個&\left(0<a \le \dfrac{1}{\sq...
...ft(\dfrac{1}{\sqrt[3]{2}}<a \le 1\right)
\end{array} \right.
\end{displaymath}

  3. $1<a$ のとき

    \begin{eqnarray*}
f(0)&=&-a+\dfrac{2}{3}<0\\
f(1)&=&1-a- \left(a-\dfrac{2}{3} \right)
=-2a+\dfrac{5}{3}<0
\end{eqnarray*}

    よって $0 \le x \le 1$ における解は0個.
以上から与方程式の $0 \le x \le 1$ における解は

\begin{displaymath}
a \le \dfrac{1}{\sqrt[3]{2}}のとき1個,\ \ \dfrac{1}{\sqrt[3]{2}}<a のとき0個
\end{displaymath}

となる. □



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