next up previous 次: 問題と考え方 上: 帰納的定義 前: マルコフ過程

数列を漸化式に戻す

数列と2次方程式

$a,\ b$は定数, $\alpha,\ \beta$は0でない異なる定数として,数列

\begin{displaymath}
a_n=a\alpha^n+b\beta^n
\end{displaymath}

を考える. ここで

\begin{displaymath}
\alpha+\beta=p,\ \alpha\beta=q
\end{displaymath}

とおくと,$\alpha$$\beta$は2次方程式

\begin{displaymath}
t^2-pt+q=0
\end{displaymath}

の解であるから

\begin{displaymath}
\begin{array}{l}
\alpha^2-p\alpha+q=0\\
\beta^2-p\beta+q=0
\end{array}\end{displaymath}

が成り立つ. よって

\begin{displaymath}
\begin{array}{l}
\alpha^{n+2}-p\alpha^{n+1}+q\alpha^n=0\\
\beta^{n+2}-p\beta^{n+1}+q\beta^n=0
\end{array}\end{displaymath}

が成り立つ. $a\times$ 第1式$+b\times$ 第2式より

\begin{displaymath}
a_{n+2}-pa_{n+1}+qa_n=0
\end{displaymath}

つまり三項間漸化式ができる. これはきわめて重要なことなので,よくおさえておきたい.

もちろん


と直接計算でもできるのだが,2次方程式との関連で理解しておきたい.

このように数列を漸化式に戻すことによって, ある種の数列の性質を帰納的に示すことができることがある.


例題 1.15       [03東大文科]

2次方程式$x^2-4x+1=0$の二つの実数解のうち大きいものを$\alpha$, 小さいものを$\beta$とする.
$n=1,\ 2,\ 3,\ \cdots$に対し,

\begin{displaymath}
s_n=\alpha^n+\beta^n
\end{displaymath}

とおく.
  1. $s_1$$s_2$$s_3$を求めよ.また,$n\ge 3$に対し, $s_n$$s_{n-1}$$s_{n-2}$で表せ.
  2. $s_n$は正の整数であることを示し,$s_{2003}$の1の位の数を求めよ.
  3. $\alpha^{2003}$以下の最大の整数の1の位の数を求めよ.


考え方     問題そのものが漸化式を求めているので,それを作りどのように活用するかを考えよう.

解答    

  1. $\alpha=2+\sqrt{3},\ \beta=2-\sqrt{3}$ $\alpha+\beta=4$, $\alpha\beta=1$である.

    \begin{eqnarray*}
&&s_1=\alpha+\beta=4\\
&&s_2=\alpha^2+\beta^2=(\alpha+\beta)^2-2\alpha\beta=16-2=14
\end{eqnarray*}

    また$n\ge 3$のとき

    \begin{eqnarray*}
&&\alpha^n-4\alpha^{n-1}+\alpha^{n-2}=\alpha^{n-2}(\alpha^2-4...
...beta^n-4\beta^{n-1}+\beta^{n-2}=\beta^{n-2}(\beta^2-4\beta+1)=0
\end{eqnarray*}

    2式を加えて

    \begin{displaymath}
s_n-4s_{n-1}+s_{n-2}=0
\end{displaymath}

    これから

    \begin{displaymath}
s_3=4s_2-s_1=4\cdot14-4=52
\end{displaymath}

  2. $\alpha>0,\ \beta>0$より$s_n>0$である. $s_1,\ s_2$は整数で $s_{n-2},\ s_{n-1}$が整数なら $s_n=4s_{n-1}-s_{n-2}$も整数. 数学的帰納法によって $n=1,\ 2,\ 3,\ \cdots$に対し$s_n$は整数である.

    $s_n$の1の位の数を$a_n$とする.

    \begin{displaymath}
a_1=4,\ a_2=4,\ a_3=2
\end{displaymath}

    である. $m=0,\ 1,\ 2,\ 3,\ \cdots$に対し

    \begin{displaymath}
a_{3m+1}=4,\ a_{3m+2}=4,\ a_{3m+3}=2
\quad \cdots\maru{1}
\end{displaymath}

    を数学的帰納法で示す.$m=0$のときは成立する.$m$のとき成立するとする.


    $m+1$のときも成立しすべての$m$$\maru{1}$が示された.

    \begin{displaymath}
2003=3\times667+2\quad ∴\quad a_{2003}=4
\end{displaymath}

  3. $0<\beta<1$なので $0<\beta^{2003}<1$ $s_{2003}=10h+4$とおくと

    \begin{displaymath}
\alpha^{2003}=10h+4-\beta^{2003}=10h+3+(1-\beta^{2003})
\end{displaymath}

    $0<1-\beta^{2003}<1$なので$\alpha^{2003}$の1の位は3である.

next up previous 次: 問題と考え方 上: 帰納的定義 前: マルコフ過程
Aozora Gakuen