上: 積分法
前: 積分定理
まず次の補題を示す.
補題 4
領域
で定義された関数
が,定義域で正則であるとする.
を中心とする半径
の円周
が
に含まれるとき,半径
となる.
■
証明
とおく.
このとき,
である.よって,
となる.
□
定理 7
領域
で定義された関数
が,定義域で正則であるとする.
内の閉曲線
の内部の任意の点
に関して,
が成り立つ.これを
Cauchy の積分公式という.
■
証明
点を中心とする半径の円周はの内部にあるとする.
上の点Pと上の点Qを結び,
矢線の様に,点Pから点Qへ,点Qから上を反時計回りに点Qに至り,
点Qから点Pへ,そして点Pから上を時計回りに点Pに至る経路で
次の定積分を行う.ただし,は上を時計回りにまわる経路である.
積分定理によって,
で
なので,
である.この結果,
はに関係ない一定の値を有する.
与えられたに対して,
となるようにをとることができる.
ここで,補題4より,
また,
は任意であるから,
となり,
である.これが,証明すべき等式である.□
定理 8
領域
で定義された関数
が,点
で正則であるとする.
このとき
は
において各階の微分が可能である.
Goursat(1900)による.
■
証明
点を中心とする円で,その内部で正則であるような半径の最大値をとする.
であるとに対して,
である点と,を中心とする半径の円をとる.
が上にあるとき,
において,
であるから,この等比数列は収束する.
さらに,
は,上のに対して一様収束する.なぜなら,の上で,とすれば,
であるから,定理によって一様収束する.
この結果
左辺はに等しいので,
とおくと,
と,無限級数の和で表される.を固定してを変数とみれば,これはのにおける
テーラー展開である.
このように,はの近傍で冪級数に展開されるので,において何回でも微分可能である.
□
このように,複素関数を考えるとき,その微分や積分は大きく統制された姿を現す.
冪級数で表される関数を解析関数というとすれば,
実関数の範囲では微分可能性と解析関数であることは同値ではないが,
複素関数の世界ではこれが同値になるのである.
ここから複素関数の世界は大きく展開する.
それは他書にゆだねて,本稿はここまでとする.
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Aozora
2020-04-17