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連続関数

複素数列の収束

複素数の数列$\{z_n\}$の収束を次のように定義する.

任意の正数$\epsilon$に対して

\begin{displaymath}
n>n_0\quad \Rightarrow \quad
\left\vert z_n-\alpha \right\vert<\epsilon
\end{displaymath}

となる$n_0$が存在するとき,数列$\{z_n\}$$\alpha$に収束するといい,これを

\begin{displaymath}
\lim_{n \to \infty}z_n=\alpha
\end{displaymath}

と書く.

$z_n=x_n+y_n$$\alpha=a+ib$とするとき, 平面$\mathbb{R}^2$上の2点 $\mathrm{P}_n(x_n,\ y_n)$ $\mathrm{A}(a,\ b)$の距離

\begin{displaymath}
d(\mathrm{P}_n,\ \mathrm{A})=\sqrt{(x_n-a)^2+(y_n-b)^2}
\end{displaymath}

が, $\left\vert z_n-\alpha \right\vert$と一致するので, 複素数列の収束は,平面上の点列の収束と同値であり, それはまた複素平面上の点列の収束とも同一視できる.

そして,平面上の点列の収束のところで示したように, 点列の収束は,各成分の収束と同値であるから, 複素数列の収束も,実成分,虚成分から作られる実数列 $\{x_n\},\ \{y_n\}$ がそれぞれ収束することと同値である. よって,複素数列の収束に関する諸性質が, 実数列の収束に関する定理から導かれる.

$\mathbb{C}$の部分集合$D$閉集合であることの定義は, 距離空間のそれと同じである. 閉集合,領域など,平面上で定義された平面の部分集合に関する概念は, そのまま複素平面の部分集合において用いることができる.

複素関数

複素数$\mathbb{C}$の部分集合$D$から複素数$\mathbb{C}$への写像を複素関数という. これを$w=f(z)$のように書く.定義域と値域を区別するときは, 定義域は$z$平面にあり,値域は$w$平面にあるという表し方をする.

複素関数の値$f(z)$の実部,虚部はそれぞれ$z$の関数であり, 変数$z$自体が$z=x+yi$とするとき$x$$y$の関数であるので, 複素関数$f(z)$はその実部,虚部も$x$$y$の関数であり,

\begin{displaymath}
f(z)=P(x,\ y)+iQ(x,\ y)
\end{displaymath}

と表すことができる.

複素関数$f(z)$$z=\alpha$連続であるとは,任意の正数$\epsilon$に対して, 正数$\delta$で,

\begin{displaymath}
\left\vert z-\alpha \right\vert<\delta
\quad \Rightarrow \quad
\left\vert f(z)-f(\alpha) \right\vert<\epsilon
\end{displaymath}

となるものが存在することである. これは2つの距離空間の間の写像の連続性を定めた定義[*]を, 複素関数に適用したものである.

したがって,$f(z)$$z=\alpha$で連続であることは次の条件とも同値である.

$\alpha$に収束する任意の点列$\{z_n\}$に対して

\begin{displaymath}
\lim_{n \to \infty}f(z_n)=f(\alpha)
\end{displaymath}

が成り立つ.

この証明も,連続関数に関する定理[*]の証明と同様になされる.

これと複素数列の性質をあわせれば, 複素関数 $f(z)=P(x,\ y)+iQ(x,\ y)$$z=\alpha=a+ib$で連続であることと, 2つの関数$P(x,\ y)$$Q(x,\ y)$はそれぞれ2変数の関数として, $(x,\ y)=(a,\ b)$で連続であることと同値である.

以上のように,複素関数の連続性は,実2次元距離空間から実2次元距離空間への写像の連続性そのものである.



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Aozora 2020-04-17