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東北大AO解答

(1)  $ \alpha=\cos x+i\sin x $ とする. \[ \sum_{k=0}^n\alpha^k=1+\sum_{k=1}^n\cos(kx)+i\left\{\sum_{k=1}^n\sin(kx) \right\} \] であり. \begin{eqnarray*} \sum_{k=0}^n\alpha^k&=&\dfrac{1-\alpha^{n+1}}{1-\alpha}\\ &=&\dfrac{1-\{\cos(n+1)x+i\sin(n+1)x\}}{1-(\cos x+i\sin x)}\\ &=&\dfrac{\{1-\cos(n+1)x-i\sin(n+1)x)\}\{(1-\cos x)+i\sin x\}}{(1-\cos x)^2+\sin^2 x}\\ \end{eqnarray*} であるから,実部を比較することにより, \begin{eqnarray*} 1+\sum_{k=1}^n\cos(kx)&=&\dfrac{\{1-\cos(n+1)x\}(1-\cos x)+\sin(n+1)x\sin x}{(1-\cos x)^2+\sin^2 x}\\ &=&\dfrac{1-\cos x-\cos(n+1)x+\{\cos(n+1)x\cos x+\sin(n+1)x\sin x\}}{2(1-\cos x)}\\ &=&\dfrac{1}{2}+\dfrac{-\cos(n+1)x+\cos nx}{2(1-\cos x)} =\dfrac{1}{2}+\dfrac{2\sin\frac{(2n+1)x}{2}\sin\frac{x}{2}}{4\sin^2\frac{x}{2}}\\ &=&\dfrac{1}{2}+\dfrac{\sin\frac{(2n+1)x}{2}}{2\sin\frac{x}{2}} \end{eqnarray*} よって \begin{eqnarray*} \sum_{k=1}^n\cos(kx)&=& -\dfrac{1}{2}+\dfrac{\sin\frac{(2n+1)x}{2}}{2\sin\frac{x}{2}} =\dfrac{-\sin\frac{x}{2}+\sin\frac{(2n+1)x}{2}}{2\sin\frac{x}{2}}\\ &=&\dfrac{2\cos\frac{(n+1)x}{2}\sin\frac{n}{2}x}{2\sin\frac{x}{2}} =\dfrac{\sin\frac{nx}{2}}{\sin\frac{x}{2}}\cos\dfrac{(n+1)x}{2} \end{eqnarray*}

(2)  $ \displaystyle \int_0^x\cos(kt)\,dt=\dfrac{\sin (kx)}{k} $ であるから, $ \displaystyle f_n(x)=\sum_{k=1}^n\dfrac{\sin(kx)}{k} $ と置くと, \[ f_n(x) =\sum_{k=1}^n\int_0^x\cos(kt)\,dt =\int_0^x\sum_{k=1}^n\cos(kt)\,dt =\int_0^x\dfrac{\sin\frac{nt}{2}}{\sin\frac{t}{2}}\cos\dfrac{(n+1)t}{2}\,dt \] よって, \[ f_n'(x) =\dfrac{\sin\frac{nx}{2}}{\sin\frac{x}{2}}\cos\dfrac{(n+1)x}{2} \] である.また, $ f_n(x) $ の定義から $ f_n(0)=f_n(\pi)=0 $ である.

区間 $ (0,\ \pi) $ で $ f_n(x) >0 $ であることを, $ n $ に関する数学的帰納法で証明する. \[ f_1(x)=\int_0^x\cos t\,dt=\sin x \] なので, $ n=1 $ のときは成立している.
区間 $ (0,\ \pi) $ で $ f_{n-1}(x) >0 $ であると仮定する.
$ f_n(x) $ の,区間 $ [0,\ \pi] $ での最小値は, $ f_n(0),\ f_n(\pi) $ ,または極小値のいずれかである. よって,極小値がすべて正であれば,両端をのぞく区間 $ (0,\ \pi) $ で $ f_n(x) >0 $ である.
したがって,区間 $ (0,\ \pi) $ で $ f_n'(x)=0 $ となる $ x $ の値に対して $ f_n(x) >0 $ であることを証明すればよい.

$ f_n'(x)=0 $ となるのは, \[ \dfrac{nx}{2}=l\pi,\ \quad \dfrac{(n+1)x}{2}=\dfrac{\pi}{2}+l\pi \] となる整数 $ l $ があるとき,つまり, \[ x=\dfrac{2l}{n}\pi,\ または\ x=\dfrac{2l+1}{n+1}\pi \] となる整数 $ l $ があるときである.
$ f_n(x)=f_{n-1}(x)+\dfrac{\sin nx}{n} $ であるから, $ x=\dfrac{2l}{n}\pi $ のとき. \[ f_n\left(\dfrac{2l}{n}\pi \right) =f_{n-1}\left(\dfrac{2l}{n}\pi \right)+\dfrac{\sin 2l\pi}{n} =f_{n-1}\left(\dfrac{2l}{n}\pi \right) >0 \] である. $ x=\dfrac{2l+1}{n+1}\pi $ のとき. \[ f_n\left(\dfrac{2l+1}{n+1}\pi \right)= f_{n-1}\left(\dfrac{2l+1}{n+1}\pi \right)+\dfrac{\sin\left(\dfrac{(2l+1)n}{n+1}\pi \right)}{n} \] ここで, $ 0< x< \pi $ より, $ 0< \dfrac{2l+1}{n+1}< 1 $ ,つまり, $ 2l< n $ である.従って, \[ 2l\pi< \dfrac{(2l+1)n}{n+1}\pi< (2l+1)\pi \] となり, $ \sin\left(\dfrac{(2l+1)n}{n+1}\pi\right) >0 $ である. 帰納法の仮定とあわせてこの場合も正である.

よって $ n $ のときにも成り立ち, すべての $ n $ で,区間 $ (0,\ \pi) $ で $ f_n'(x)=0 $ となる $ x $ の値に対して $ f_n(x) >0 $ である.
したがって,区間 $ (0,\ \pi) $ で $ f_n(x) >0 $ であることが示された.

問題