『数学辞典』[43]の「射影幾何学」−「射影幾何とエルランゲンの目録」には次のようにある.
F.Kleinのエルランゲンの目録の立場からは、射影幾何学は射影変換群により不変な図形の性質の研究であるといえる.これにより他の古典幾何学との関係が明白になる.係数体が実数体である射影空間の1つの超平面を指定するとき,これを不変にする射影変換全体の集合は射影変換群の部分群を作り,これに従属する幾何学がアフィン幾何学である.さらに内にある正則2次超曲面を指定し,これをも不変にする部分群に従属する幾何学が相似幾何学であり,ユークリッド幾何学はその1種である.非ユークリッド幾何学や共形幾何学もや内のある正則2次超曲面を不変にする射影変換群の部分群に従属する幾何学として射影幾何学に含まれる.射影幾何学が最も広いといわれるのはこの意味においてである.
の射影変換群をとする.の座標を とする.
このように,の作用で動かないものを選ぶことによって,さまざまの幾何が構成される. 動くなかで動かないもを見出す,これは数学のもっとも基本的な考え方であった.
その幾何は,リーマン以降,多様体の幾何と発展する.それはもはや大域的な変換群をもたず,その意味において,クラインのモデルでは説明できないようになってゆく.射影幾何とその中でモデルが実現される幾何は,ここまでである.
しかし,局所的に,動くなかで動かないもを見出す,という精神は引き継がれ,その後の幾何はさらに豊かに展開した.