根元事象が同様に確からしく,集合の要素の個数で確率が決まるときは,図のように
となるということである. |
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いずれの目が出る確率も同様に確かなサイコロがある. このサイコロの1の目からの目までの面を赤く塗り, の目から6の目までの面を青く塗る.ただしとする. このサイコロを投げるとき, 赤の面が出るという事象を, 偶数の面が出るという事象をとする. 事象と事象が独立となるようなの値を求めよ.
ある教科書は「同じ状態のもとでくりかえすことができる」ことを試行の条件として書く. そのうえで「2つの試行が互いに他方の結果に影響しないとき,これらの試行は独立であ る」と書く.
そして,独立でない試行の例として,くじを1回目に引く試行をS,2回目に引く試行をTと したうえで,「引いたくじをもとに戻さない場合」をあげる.
しかしこの場合,1回目に当たりを引くか外れを引くかで,2回目にくじを引く条件が異な る.2回目のTは「同じ状態のもとでくりかえすことができる」という条件に反するので, 試行とは言えないのではないか. このような疑問が寄せられた.これは当然である.
また,この教科書は
2つの独立な試行,を行うとき,でが起こり, でが起こる事象をとすると,事象の確率は
ではどのように考えるべきなのか.
試行とは,手順「戻して回引く」とか,「戻さずに回引く」などの規則にもとづく一連の行為全体を意味し,それによって定まる確率空間を基礎とする,というのが確率論の立場である.
回くじを引くとき,その結果は(◯××◯…)のような個の◯と×の順列の全体である.戻すときも戻さないときも,その確率は計算できる.そのなかで1回目当たりという事象は(◯△△…)(△はどちらでもよい)の形をした部分集合であり,その確率も計算できる.2回目当たりという事象は(△◯△…)の形をした部分集合,1,2回目当たりという事象は(◯◯△…)の形をした部分集合である.その確率も計算できる.
これが任意の回目と回目で計算でき,その事象が独立か否かが定まる. 回目の事象と回目の事象が,各とで独立なとき, その試行を「独立試行」という.それぞれの回の確率的行為が独立という意味ではない.回くじを引くという試行の性質なのである.
実際,かつては教科書もそのようになっていた. 手元にある1969年の実教出版の教科書では,「独立試行」の「独立」はこの手順の性質としてつけられた形容詞であって,1回1回の確率的行為が独立という意味ではない.
このように,独立試行という概念は,
事象の独立のなかに含むことができ,
またそうしてこそ,確率論の記述となる.