next up previous 次: 確率空間の積 上: 条件付確率 前: 条件付確率の定義

事象の独立

定義 2        確率空間$(U,\ p)$の2つの事象$A$$B$に対して

\begin{displaymath}
p_A(B)=p(B)
\end{displaymath}

が成り立つとき,事象$A$$B$互いに独立という.

言うまでもなく,この等式は

\begin{displaymath}
p(A\cap B)=p(A)p(B)
\end{displaymath}

と同値である.

根元事象が同様に確からしく,集合の要素の個数で確率が決まるときは,図のように

\begin{displaymath}
\dfrac{n(A\cap B)}{n(A)}=\dfrac{n(B)}{n(U)}
\end{displaymath}

となるということである.

確認問題 2       解答2

いずれの目が出る確率も同様に確かなサイコロがある. このサイコロの1の目から$m$の目までの面を赤く塗り, $m+1$の目から6の目までの面を青く塗る.ただし$1\le m \le 5$とする. このサイコロを投げるとき, 赤の面が出るという事象を$A$, 偶数の面が出るという事象を$B$とする. 事象$A$と事象$B$が独立となるような$m$の値を求めよ.

事象の独立と試行の独立

「試行の独立」,あるいは「独立試行」という用語は,教育現場に混乱をもたらしている.

ある教科書は「同じ状態のもとでくりかえすことができる」ことを試行の条件として書く. そのうえで「2つの試行が互いに他方の結果に影響しないとき,これらの試行は独立であ る」と書く.

そして,独立でない試行の例として,くじを1回目に引く試行をS,2回目に引く試行をTと したうえで,「引いたくじをもとに戻さない場合」をあげる.

しかしこの場合,1回目に当たりを引くか外れを引くかで,2回目にくじを引く条件が異な る.2回目のTは「同じ状態のもとでくりかえすことができる」という条件に反するので, 試行とは言えないのではないか. このような疑問が寄せられた.これは当然である.

また,この教科書は

     2つの独立な試行$S$$T$を行うとき,$S$$A$が起こり, $T$$B$が起こる事象を$C$とすると,事象$C$の確率は

\begin{displaymath}
P(C)=P(A)P(B)
\end{displaymath}

と書く.事象の独立は,積事象の確率が確率の積になることとして定義された. ところが,この記述では,何の論証もなしに,この等式が提示される. いったいこの等式は「2つの試行$S$$T$が独立である」ことの定義なのか, あるいは結論として出てくるものなのか不明である.

ではどのように考えるべきなのか.

試行とは,手順「戻して$n$回引く」とか,「戻さずに$n$回引く」などの規則にもとづく一連の行為全体を意味し,それによって定まる確率空間を基礎とする,というのが確率論の立場である.

$n$回くじを引くとき,その結果は(◯××◯…)のような$n$個の◯と×の順列の全体である.戻すときも戻さないときも,その確率は計算できる.そのなかで1回目当たりという事象は(◯△△…)(△はどちらでもよい)の形をした部分集合であり,その確率も計算できる.2回目当たりという事象は(△◯△…)の形をした部分集合,1,2回目当たりという事象は(◯◯△…)の形をした部分集合である.その確率も計算できる.

これが任意の$k$回目と$l$回目で計算でき,その事象が独立か否かが定まる. $k$回目の事象と$l$回目の事象が,各$k$$l$で独立なとき, その試行を「独立試行」という.それぞれの回の確率的行為が独立という意味ではない.$n$回くじを引くという試行の性質なのである.

実際,かつては教科書もそのようになっていた. 手元にある1969年の実教出版の教科書では,「独立試行」の「独立」はこの手順の性質としてつけられた形容詞であって,1回1回の確率的行為が独立という意味ではない.

このように,独立試行という概念は, 事象の独立のなかに含むことができ, またそうしてこそ,確率論の記述となる.


Aozora 2017-09-13