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フェルマの小定理

定理 23 (オイラーの定理)
     $m$ を正整数とし $a$$m$ と互いに素な整数とする. このとき
\begin{displaymath}
a^{\varphi(m)}\equiv 1\quad (\bmod.\ m)
\end{displaymath} (2.29)

が成り立つ.

とくに $m=p\ (素数)$ に対しては, $(a,\ p)=1$ のとき

\begin{displaymath}
a^{p-1}\equiv 1\quad (\bmod.\ p)
\end{displaymath} (2.30)

が成り立つ.こちらの方をフェルマの小定理という.■

証明     $m$ を法とする既約類の個数は$\varphi(m)$個ある.その一組を

\begin{displaymath}
x_1,\ x_2,\ \cdots,\ x_{\varphi(m)}
\end{displaymath}

とする.このとき

\begin{displaymath}
ax_1,\ ax_2,\ \cdots,\ ax_{\varphi(m)}
\end{displaymath}

もまた一組の既約剰余系である. なぜなら $(a,\ m)=1$ より

\begin{displaymath}
x\equiv y\quad (\bmod.\ m)\quad \iff\quad ax\equiv ay\quad (\bmod.\ m)
\end{displaymath}

であるから $x$ が剰余系なら $ax$ も剰余系である. つまり $x$$m$ を法として合同な整数の集合とすれば,その集合の元にすべて $a$ を乗じた 整数の集合は確かに $ax$ と合同な整数の全体になっており, $ax$ も剰余系である. さらに $x$$m$ と互いに素なら $ax$$m$ と互いに素なので,既約剰余系からは 既約剰余系が得られることもわかる.

したがって二つの数の集合

\begin{displaymath}
\{x_1,\ x_2,\ \cdots,\ x_{\varphi(m)}\}\quad と
\quad \{ax_1,\ ax_2,\ \cdots,\ ax_{\varphi(m)}\}
\end{displaymath}

の各元は $m$ を法として互いに合同なものが一対一に対応している.

よって,その積は$m$ を法として互いに合同である.つまり

\begin{eqnarray*}
x_1x_2\cdots x_{\varphi(m)}
&\equiv &ax_1ax_2\cdots ax_{\var...
...uiv &a^{\varphi(m)}x_1x_2\cdots x_{\varphi(m)}\quad (\bmod.\ m)
\end{eqnarray*}

$(x_1x_2\cdots x_{\varphi(m)},\ m)=1$ であるから

\begin{displaymath}
a^{\varphi(m)}\equiv 1\quad (\bmod.\ m)
\end{displaymath}

である.オイラーの定理(2.29)が示された.

$m=p$ なら $\varphi(p)=p-1$ であるから, オイラーの定理の特別な場合としてフェルマの小定理(2.30)が成り立つ.□

例 2.4.1  

\begin{displaymath}
\begin{array}{lll}
\varphi(5)=4&13^4\equiv 1\quad (\bmod....
...-1=(7-1)(7+1)\\
&&\times(7^2+1)(7^4+1)(7^8+1)
\end{array}
\end{displaymath}

上の例で13の場合は4乗して初めて $1\quad (\bmod.\ 5)$ となるが, 11の場合は2乗した段階ですでに $1\quad (\bmod.\ 5)$ である.

$a$ のべきの中で $a^e\equiv 1\quad (\bmod.\ m)$ となる最小の $e$$a$ の法 $m$ に関する指数という.

定理 24
     $a$ の法 $m$ に関する指数を $e$ とする. このとき $a^k\equiv 1\quad (\bmod.\ m)$ となったとすれば $k$$e$ の倍数である. 特に $\varphi(m)$$e$ の倍数である.逆にいうと法 $m$ に関する指数となりうるのは $\varphi(m)$ の約数にかぎる.■

証明     $k$$e$ で割った商を $q$ ,余りを $r$ とする.

\begin{displaymath}
1\equiv a^k=a^{eq+r}\equiv a^r\quad (\bmod.\ m)
\end{displaymath}

ここで $0\le r<e$ であるが,もし $r \ne 0$ なら $a^r\equiv 1\quad (\bmod.\ m)$ となる 正の整数 $r$ があることになり $e$ の最小性に反する.ゆえに $r=0$ . つまり $k$$e$ の倍数である.□


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