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循環小数

既約分数を小数表示すると,有限小数かまたは循環小数になる. 循環節の長さはフェルマの小定理によって決定される.

定理 25
     $\dfrac{m}{n}$ は既約真分数で分母 $n$$(10,\ n)=1$ とする. このとき$\dfrac{m}{n}$ は循環小数に展開され,循環節の桁数を $e$ とすれば, $e$

\begin{displaymath}
10^e\equiv 1\quad (\bmod.\ n)
\end{displaymath}

となる最小の正整数である. $e$$\varphi (n)$の約数で, $n$ のみによって定まる.■

証明     いま

\begin{displaymath}
10^e-1=n\cdot a
\end{displaymath}

とおく.このとき

\begin{eqnarray*}
\dfrac{m}{n}&=&\dfrac{ma}{na}=\dfrac{ma}{10^e-1}\\
&=&\dfrac{ma}{10^e}+\dfrac{ma}{10^{2e}}+\dfrac{ma}{10^{3e}}+\cdots
\end{eqnarray*}

仮定から $m<n$ なので $ma<na<10^e$ .ゆえに確かに$\dfrac{m}{n}$ は循環節の桁数 $e$ の 循環小数に展開されている.

逆に$\dfrac{m}{n}$$e$ 桁の循環節 $c$ をもつ循環小数なら

\begin{displaymath}
\dfrac{m}{n}
=\dfrac{c}{10^e}+\dfrac{c}{10^{2e}}+\dfrac{c}{10^{3e}}+\cdots
=\dfrac{c}{10^e-1}
\end{displaymath}

$m$$n$ は互いに素なので $10^e-1=na,\ c=ma$ となり

\begin{displaymath}
10^e\equiv 1\quad (\bmod.\ n)
\end{displaymath}

最小性は循環節の桁数の定義,つまりくりかえす最短の桁数,より明らか.□

$(10,\ n)=1$でないときはどうなるか.このとき $n=2^u5^vn'$ とおく. $u$$v$ の小さくない方を $k$ とする. $k=max(u,\ v)$ .そして $\dfrac{10^km}{n}$ を約分して既約分数 $\dfrac{m'}{n'}$ を得るとする. すると$(10,\ n')=1$である. 10の$n'$を法とする指数を $e$ とすれば, $\dfrac{m'}{n'}$$e$ 桁の循環節をもつ循環小数になる.なお $n'=1$ になればこれは有限小数である.

この定理は実例によって納得するのがよい.

例 2.4.2        $n=7$とする.

\begin{eqnarray*}
&&10^1\equiv 3\quad (\bmod.\ 7),\ 10^2\equiv 2\quad (\bmod.\ ...
...10^5\equiv 5\quad (\bmod.\ 7),\ 10^6
\equiv 1\quad (\bmod.\ 7)
\end{eqnarray*}

10 の法 7 に対する指数 $e$ は 6 である.つまり 10 は素数 7 の原始根である.

循環小数の作られ方を詳しく見てみよう.

\begin{eqnarray*}
10^1&=&3+7\cdot 1\\
10^2&=&2+7\cdot 14\\
10^3&=&6+7\cdot ...
...\cdot 1428\\
10^5&=&5+7\cdot 14285\\
10^6&=&1+7\cdot 142857
\end{eqnarray*}

\begin{eqnarray*}
∴\quad \dfrac{1}{7}&=&\dfrac{142857}{10^6-1}\\
&=&\dfrac{...
...+\dfrac{1}{10^{12}}+\cdots \right\}\\
&=&0.\dot{1}4285\dot{7}
\end{eqnarray*}

以下は上の7で割った余りと商を用いて作られる.

\begin{displaymath}
\begin{array}{lll}
\dfrac{3}{7}&=\dfrac{10^1}{7}-1&=0.\dot...
...{7}&=\dfrac{10^5}{7}-14285&=0.\dot{7}1428\dot{5}
\end{array}
\end{displaymath}

このうち $\dfrac{6}{7}$ はじつは

\begin{displaymath}
\dfrac{6}{7}+\dfrac{1}{7}=1=0.\dot{9}\quad
より\quad 0.\dot{9}-0.\dot{1}4285\dot{7}=0.\dot{8}5714\dot{2}
\end{displaymath}

としても求まる.

例 2.4.3        $n=13$とする.$10^7$以降は不要であるが書く.

\begin{eqnarray*}
10^1&=&10+13\cdot 0\\
10^2&=&9+13\cdot 07\\
10^3&=&12+13\...
...1}&=&4+13\cdot 07692307692\\
10^{12}&=&1+13\cdot 076923076923
\end{eqnarray*}

10 の法 13 に対する指数 $e$ は 6 である.

\begin{eqnarray*}
∴\quad \dfrac{1}{13}&=&\dfrac{076923}{10^6-1}\\
&=&\dfrac...
...+\dfrac{1}{10^{12}}+\cdots \right\}\\
&=&0.\dot{0}7692\dot{3}
\end{eqnarray*}

これから次の循環小数ができる.

\begin{displaymath}
\begin{array}{lll}
\dfrac{10}{13}&=\dfrac{10^1}{13}-0&=0.\...
...3}&=\dfrac{10^5}{13}-07692&=0.\dot{3}0769\dot{2}
\end{array}
\end{displaymath}

これ以外のものは次の式から出る.

\begin{eqnarray*}
2\cdot10^1&=&7+13\cdot 1\\
2\cdot10^2&=&5+13\cdot 15\\
2\...
...
2\cdot10^5&=&8+13\cdot 15384\\
2\cdot10^6&=&2+13\cdot 153846
\end{eqnarray*}

つまり

\begin{displaymath}
\begin{array}{lll}
\dfrac{7}{13}&=\dfrac{2\cdot10^1}{13}-1...
...rac{2\cdot10^5}{13}-153846&=0.\dot{1}5384\dot{6}
\end{array}
\end{displaymath}


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