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相互法則とは何か

2 が法 113 に関する平方剰余であるか,非剰余であるかを決定する方法, つまり $\left(\dfrac{2}{113} \right)$を求める一般的な方法はあるのか. 一般に $\left(\dfrac{p}{q} \right)$を求める方法は.これは初等整数論の基本問題である. これについてガウスが整数論の基本定理と呼んだ大変美しい定理が成り立つ.それが 平方剰余の相互法則 である.

定理 33 (平方剰余の相互法則)
     $p,\ q$ を相異なる奇素数とする.
  1. 平方剰余の相互法則 : $\left(\dfrac{p}{q}\right)\left(\dfrac{q}{p}\right)
=(-1)^{\frac{p-1}{2}\cdot \frac{q-1}{2}}$
  2. 第一補充法則 : $\left(\dfrac{-1}{p}\right)=(-1)^{\frac{p-1}{2}}$
  3. 第二補充法則 : $\left(\dfrac{2}{p}\right)=(-1)^{\frac{p^2-1}{8}}$
が成り立つ.■

各法則の意味は次の通りである.

  1. $\dfrac{p-1}{2}$ $\dfrac{q-1}{2}$のいずれもが奇数のときにかぎり $(-1)^{\frac{p-1}{2}\cdot \frac{q-1}{2}}=-1$である.ゆえに

    \begin{displaymath}
\begin{array}{ll}
p\equiv 1\quad (\bmod.\ 4)\ または\...
...frac{q}{p} \right)=-\left(\dfrac{p}{q} \right)
\end{array}
\end{displaymath}


  2. \begin{displaymath}
\left(\dfrac{-1}{p} \right)=(-1)^{\frac{p-1}{2}}=
\left\...
...equiv 3\quad (\bmod.\ 4)\ のとき)
\end{array}
\right.
\end{displaymath}


  3. \begin{displaymath}
\begin{array}{ll}
\left(\dfrac{2}{p} \right)=1&\iff \ p\...
...ight)=-1&\iff \ p\equiv 3,\ 5\quad (\bmod.\ 8)
\end{array}
\end{displaymath}

相互法則はすでにオイラー(Leonhard Euler,1707〜83)が多くの実例から帰納的に発見していた. ルジャンドル(Adrien Marie Legendre,1752〜1833)が定理 33 のような形式で表し, その証明を試みた. 彼はその証明の中で,初項と公差が互いに素な無限等差数列(算術級数)のなかに 素数が存在することを,証明なしに用いている.そのため証明は完全ではなかった.

相互法則を最初に完全に証明したのはガウス(Karl Friedrich Gauss,1777〜1855)である. ガウスは相互法則を整数論の基本法則と名づけ,なんと七つのまったく異なる証明を与えた. 「ガウスの予備定理」を用いるいちばん初等的な第三の証明法,および「ガウス和」を用いる 第四の証明法によって,証明する.



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