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数学的帰納法

数学的帰納法の構成

自然数の性質(iii)を数学的帰納法の原理というのはなぜか.

数学的帰納法は証明すべき対象の性質そのものであると考えられている.それは正しいのだが,数学的帰納法の証明ですべての自然数で成り立つ根拠は,実は自然数の性質そのもののなかにある.このことは理解しておきたい.

$p(n)$ を自然数 $n$を含む何らかの命題とする. $p(n)$がすべての自然数$n$で成立する, つまり真であることを証明するのに, 次のような論法を用いる.

(1)
$p(1)$が真である.
(2)
$p(k)$が真なら$p(k+1)$が真である.
(3)
(1), (2)より すべての自然数 $n$ に対して $p(n)$が真である.

(1)と(2)から(3)が結論づけられる根拠が, 自然数の性質(iii)なのである.それはどういうことか.

数学的帰納法の根拠

数学的帰納法の論証の進展を真理集合の面から言いかえる. 条件 $p(n)$ の真理集合を$M$とする. つまり,

\begin{displaymath}
M=\{n\ \vert\ p(n)が真,\ n \in \mathbb{N}\}
\end{displaymath}

である.すべての自然数$n$で真であるということは, $p(n)$が真となるような$n$の集合$M$が自然数の集合$\mathbb{N}$と一致することである.数学的帰納法の(1)は$1\in M$,(2)は$k\in M$なら$k+1\in M$が成り立つことを示している.すると自然数の性質(iii)より$M=\mathbb{N}$となり,すべての自然数で真であることが示されるのである.

自然数の集合というのは,「1があって$k$が要素であれば$k+1$も要素である」ような集合のうちでいちばん小さいものとして特徴づけられる.この自然数の性質(最小性)によって,$M$$\mathbb{N}$と一致する.条件が成立する $n$ の集合 $M$ が自然数全体となり,すべての自然数 $n$ でなり立つ,つまり(3)の成立がわかる.これが数学的帰納法の論証構造である.

 


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