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実数の対等

二つの実数 $\omega$$\theta$ が,整数でかつ$ad-bc=\pm 1$ である $a,\ b,\ c,\ d$ によって

\begin{displaymath}
\omega =\matrix{a}{b}{c}{d} \theta
\end{displaymath}

となっているとき, $\omega$$\theta$対等 であるという.

$\omega =\matrix{a}{b}{c}{d} \theta$ なら, $ \theta = \matrix{d}{-b}{-c}{a} \omega$ であるから, 一方が他方に対等であれば逆も対等である.対等もまた同値関係である.

定理 51 (対等な無理数の基本性質)
     $\omega$$\theta$ が対等な無理数で, $\omega =\matrix{a}{b}{c}{d} \theta$ かつ, $\theta >1 \ , \ c>d>0$ ならば, $\omega$ の連分数展開の途中に $\theta$ が現れる. ■

証明

\begin{displaymath}
\omega =\matrix{a}{b}{c}{d}\theta \ ,\ ad-bc=e=\pm 1
\end{displaymath}

とする, $a$$c$ は互いに素なのでそのユークリッドの互除法を

\begin{displaymath}
\vecarray{a}{c}= \matrix{q_0}{1}{1}{0} \cdots \matrix{q_n}{1}{1}{0}\vecarray{1}{0}
\end{displaymath}

とする. 互いに素な整数の組の展開の個数 $n$ は偶数奇数いずれにもできるので, $e=(-1)^{n+1}$ となる方の $n$ にしておく.

\begin{displaymath}
\matrix{q_0}{1}{1}{0} \cdots \matrix{q_n}{1}{1}{0}
=\matrix{P_{n+1}}{P_{n}}{Q_{n+1}}{Q_{n}}
\end{displaymath}

とおく.つまり

\begin{displaymath}
\vecarray{a}{c}=\matrix{P_{n+1}}{P_{n}}{Q_{n+1}}{Q_{n}}\vecarray{1}{0}
\end{displaymath}

すると, $a=P_{n+1},\ c=Q_{n+1}$ でさらに $P_{n+1}Q_{n}-Q_{n+1}P_{n}=(-1)^{n+1}=e$ ,つまり $aQ_{n}-cP_{n}=e$ . よって $ad-bc= e$ より, $a(d-Q_{n})=c(b-P_{n})$ . ところが $a$$c$ は互いに素であるから, $d-Q_{n}$$c$ で割り切れる.

他方 $c>d>0$ かつ $c=Q_{n+1} \ge Q_{n} \ge 0$ より, $\vert d-Q_{n}\vert <c$ . したがって $d=Q_{n}$ である. その結果 $b=P_{n}$ になる. したがって, $\matrix{a}{b}{c}{d}$ 自身が $\vecarray{a}{c}$ の展開を用いて

\begin{displaymath}
\matrix{a}{b}{c}{d}= \matrix{q_0}{1}{1}{0} \cdots \matrix{q_n}{1}{1}{0}
\end{displaymath}

となる.つまり

\begin{displaymath}
\omega =\matrix{q_0}{1}{1}{0} \cdots \matrix{q_n}{1}{1}{0} \theta
\end{displaymath}

となる.

$\theta >1$ であるから, 展開の一意性より$\omega$ の連分数展開(の一部)そのものである.□


連分数展開の途中に現れる実数は,つねに対等であることに注意しよう.

例 5.2.1        連分数展開によって $\sqrt{2}$ の近似分数列を求めよう.

\begin{eqnarray*}
\sqrt{2} &=& \matrix{1}{1}{1}{0} \left( \dfrac{1}{\sqrt{2}-1...
...2}+1)
=\matrix{17}{7}{12}{5}(\sqrt{2}+1) \\
&\cdots&\cdots
\end{eqnarray*}

こうして,

\begin{displaymath}
\dfrac{1}{1} <\dfrac{7}{5} <\cdots <\sqrt{2} < \cdots <\dfrac{17}{12} <\dfrac{3}{2}
\end{displaymath}

という近似分数列が得られる.



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