これはいわゆる割り算がただ一通りにできるということである.これを「除法の定理」という.有理整数で成り立つ多くの事実の根拠がここにある.この節では自然数の性質に根拠をおいて「除法の定理」を証明する.
証明
整数 と正整数に対して
を満たす整数よりなる集合をとする. は集合 の部分集合である. 自然数の部分集合には最小の要素が存在するのでにも最小の数が存在する.それをとする.は を満たさないので かつ である.つまり 1.1を満たす整数が存在した.
そこで
とおく.
より で
のときはとなる.ならをにとりなおすことでである.
のとき
つぎに,このような が二通りあったとする.
それを と とする.
なら である. とする.
つまり, とする.このとき,
よって であり,その結果 である.□
のことををで割った商,のことを余りという.
であるとき,つまり
整数の集合 では除法の定理が土台になる. 代数的整数といわれる世界では,この除法の定理は成り立たない.