1と記号+と( )が組み合わさったものを要素とする集合
を表記の簡単のために
この公理は,人間の「数える」という行為をそのまま定式化したものであるが,これが自然数論の基礎となるには色んな検証が必要である.数学基礎論では,この公理体系は矛盾が起こらないことが示されている.さらにこの公理はわれわれの自然数に対する素朴な理解と合致し,同型なものはひとつしかないことが示される.無矛盾性の証明は難しい.ここでは数学的帰納法の原理を含む自然数の基本性質がペアノの公理で構成された集合で成立することと,同型の意味を再確認したうえで自然数の体系はすべて同型であることを示そう.体系に矛盾がないことと,同じ型をしたものがただひとつであること,これで数学研究の対象が明確に定義できたのである.
(1) 1を含む任意の昇列 に対し, においてにを対応させる規則を に制限した規則を考える. 定義より,のとき であるから, これは の要素 に を対応させる規則となる. この対応の規則によって, は 自然数の公理(i)(ii)(iii)(iv)を満たす. の最小性から である.よってまた を含む昇列はすべて に一致する.
(2) は を含む昇列である.ゆえに(1)から .
(3) において,
にはじまり の操作を繰り返して に至る系列はただひとつである.
二つあれば,そのいずれかの系列を定めその中にのみ存在する要素を から取り除いても,
は を含む昇列となり の最小性に反するからである.
の要素 で でなく,
しかも となる要素 が存在しない要素の集合を とする.
次に かつ となるものがあるとする.二つの系列
(4) なら なので とする.