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同型定理と演算

南海  自然数の公理を満たすものがいくつもあっては困る. しかし実は一つしかないことが示される.

定理 2

自然数の集合$N$ はすべて同型である.つまり二つの自然数の集合 $N$$N'$ があるとする. $N$$N'$ のあいだの1:1対応 $f(x)$

  1. $f(1)=1$
  2. $f(x+1)=f(x)+1$
となるものがある.

証明      $N_n=\{1,\ 2,\ \cdots ,\ n\}$$N'$ への埋め込み(中への同型対応) $f_n(x)$ を数学的帰納法で定める.

  1. $n=1$ のとき $f_1(1)=1$ とする.
  2. $f_k(x)$ が定まったとき

    \begin{displaymath}
f_{k+1}(x)=f_k(x) \ ( x=1,\ 2,\ \cdots ,\ k),\ f_{k+1}(k+1)=f_k(k)+1
\end{displaymath}

    とする.一対一であることは明らか.

つまり,次のように$f_n(x)$を構成する.

$f_k(x)$は集合{1,2,…,k}から$N'$への写像.これができたとき,これを用いて{1,2,…,k,k+1}から$N'$への写像  を,1,2,…,kに対しては$f_k(x)$と同じk+1に対してで定める.

この $f_n(x)\ (n=1,\ 2,\ 3,\cdots)$ に対して

\begin{displaymath}
f(x)=f_x(x)\ \ x \in N
\end{displaymath}

と定める.作り方から $f(N)$$N'$ における $1$ を含む昇列である.

\begin{displaymath}
∴ \quad f(N)=N'
\end{displaymath}

このとき

\begin{displaymath}
f(x+1)=f_{x+1}(x+1)=f_x(x)+1=f(x)+1
\end{displaymath}

であるから題意を満たしている.□

自然数の和・積

南海  この自然数の集合には,和と積という演算が定義される.

和の定義 $x,\ y\in N$ に対して, $x+y$ を作る演算を次のように定める.

  1. $y=1$ なら $x+y=x+1$
  2. $y>1$のとき

    \begin{displaymath}
x+y=(x+(y-1))+1
\end{displaymath}

このとき $x+y$ がただ一通りに決まり次の性質を持つ.

  1. 結合法則: $(x+y)+z=x+(y+z)$
  2. 交換法則:$x+y=y+x$

南海  これはゆっくりやればできるので,やってみてほしい.

およそこのようにして,自然数は厳密に定義される. それから有理数が構成され,実数,複素数と進んでいくのだ.

史織  このようにある意味では単純に定義される自然数が,因数分解をもち,素数というものがあり, いろんな未解決の問題があるというのは不思議です.

南海  まったく同感.


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