手元に1969年の日本書院の教科書がある. 数学IIBと数学III では区間の分割が等分か任意の分割かが違うのだが, 本質的に同じなので,ここでは数学III の定義を紹介しよう. 次のように書かれている.
関数は閉区間で連続とする.
すべての小区間の長さが,いずれも0に近づくようにを限りなく大きくするとき, の点のとり方にかかわらず, 和は一定の極限値に近づくことが知られている.
この極限値を,関数の区間における定積分といい
史織 区分求積法に出てくる和の極限値が定積分の定義なのですね. つまり,現在の教科書で区分求積法といわれる(3)は, じつは定積分の定義なのですね.
南海 そうなのだ,1969年にはこのように書かれていた. 連続なら収束することは,証明はないが正しく指摘されている. さらに,1984年に初版が出た『問題新集 微分・積分基本500選』(科学新興社)では, まとめに次のように書かれている.
とする.を区間で定義された関数とする.分割
極限値
南海
これが正確な定積分の定義だ.
この和
この定義では「が存在するとき」と書かれているがそれは
関数が区間で連続ならば,の点に関して,の関数
史織 の極限がが連続なら存在するのですか.
南海 そうだ.理論的にはそこが肝心なところなのだ.その証明自体は高校範囲を超える. 大切なことは,積分はの和の極限として定まり, の所ではと軸で囲まれた図形の面積だ,ということだ.
史織 そうすると,この定積分の定義と面積の関係は, のグラフと軸で囲まれた図形の軸の上にある部分の面積をで, 下にある部分の面積をでとり加えたものになるのですね.
南海 その通りだといいたいのだが,しかしここには一つの問題が潜んである. それは何かというと,そもそも面積とは何か,という問題だ.
史織 当然のように面積を全体に考えてきましたが,複雑な関数で面積とは何か. たしかに,この面積という数値をどのように求めるのか. これ自体が定義されていない,ということですね.
南海 実は,のとき,定積分 の値をもって, と軸とで囲まれた図形の面積と定義する.
史織 そうすると,いま言った,定積分と面積の関係は定義そのもになる.
南海 この観点で最初から書いたのが,『解析基礎』だ.高校生が読むのも不可能ではない.