next up previous
次: カルダノの解法によるまとめ 上: 3次方程式 前: 三次方程式の判別式

虚数の意義

南海 ところがここで不思議なことが起こった.

たとえば次の三次方程式を解いてみよう.

\begin{displaymath}
x^3-6x+4=0
\end{displaymath}

これは,暗算すると $x=2$が見つかり因数定理から $(x-2)(x^2+2x-2)=0 $となって解ける. つまり三つの実数解 $2,\ -1\pm\sqrt{3}$ をもつ.

これが上の一般的な方法ではどのようになるかやってみてほしい.

耕一 やってみます.

\begin{displaymath}
x^3-6x+4=x^3-3xyz+y^3+z^3
\end{displaymath}

より

\begin{displaymath}
\left\{
\begin{array}{l}
yz=2\\
y^3+z^3=4
\end{array}\right.
\end{displaymath}

これから

\begin{displaymath}
y^3+\dfrac{8}{y^3}=4 \quad \Rightarrow \quad (y^3)^2-4y^3+8=0
\end{displaymath}


\begin{displaymath}
∴ \quad y^3=2 \pm 2i=2 \sqrt{2} \left(\cos \dfrac{\pi}{4}
\pm i\sin \dfrac{\pi}{4} \right)
\end{displaymath}

$y$ として $y=\sqrt{2} \left(\cos \dfrac{\pi}{12}+ i\sin \dfrac{\pi}{12} \right)$ を 使います.すると, $z=\sqrt{2} \left(\cos \dfrac{-\pi}{12}+ i\sin \dfrac{-\pi}{12} \right)$ です.したがって

\begin{eqnarray*}
x&=&-y-z\\
&=&-\sqrt{2} \left(\cos \dfrac{\pi}{12}+ i\sin \...
...\sqrt{2} \left(-\dfrac{\sqrt{6}-\sqrt{2}}{4} \right)=-1+\sqrt{3}
\end{eqnarray*}

南海  すると一般的にやろうとすると,最後は三つの実数解が得られるのにもかかわらず, 途中の計算では虚数が登場する.実数解になる場合は, $y$$z$が共役な複素数になるわけだ. だからもし虚数を認めないと,この一般論で実数の解が得られないことになる. イタリアでは虚数を用いることについての論争があったのだが,このようにして, 虚数の存在が人々に認識されるようになっていったのだ.



Aozora Gakuen