南海 うん,これは次のような解を作っておいた.
とおく. であるから,のときで .つまり は で単調増加である.
したがって なら で となる はなく, なら で となる は1つだけある.
が異なる3つの実数解をもつので,重解もない.
ゆえに,となる解は多くても1つ,つまり,負の実数解は少なくとも2つある.□
耕一
この問題の基本は の解が多くても一つしかない,ということです.
それを方程式を実際に解くことなく判断しています,
この種の入試問題はいろいろあります.
そこで一般的に考えて, を実数を係数とする次の整式として, 次方程式
南海 阪大の問題からこのような一般的な問題を引き出すことはすばらしい.
係数が決まれば方程式も決まっているわけだから,当然方程式を満たす の値が何かも 決まっている.しかし決まっていることとそれを実際に求めることは別の問題だ. 実際,5次方程式以上になれば求めるための一般的な方法はない.
結論から言えばできる.例えば
しかし何次であれ,任意の実数の区間にいくつ解をもつか,係数に関する計算で求めることができる.
それが「スツルムの定理」といわれるものだ.阪大の問題は スツルムの定理の一番簡単なときにあたる.
耕一 また係数と解の存在する範囲の問題では先日の掲示板に次のような質問がありました.
耕一 これは南海先生がこたえておられたように,実数である必要はなく, 1と異なる解(複素数の範囲で考えて) はすべて を満たします.
南海 そうだ.その一般的な証明も掲示板に書いておいた.後で考えよう.
耕一 そこで考えたのですが,このように, 次方程式の虚数解を含めたすべての 解のなかで を満たすものが何個あるかを係数から求めることはできるのでしょうか.
南海 それもできる.虚根に関するスツルムの問題というわけだ. ただそれは少し難しい.
だいたいこの種の問題は19世紀の中頃までに解けている.日本の明治維新の前後だ.それらは いずれも大切な問題なのでぜひ高校生諸君も受けついでほしいものだ.
それで,今日はいろいろ考えながら実根の場合のスツルムの定理までを話そう.