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重根の判定

南海  後の準備のために$n$ 次方程式

\begin{displaymath}
a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots+a_0=0
\end{displaymath}

が重根をもつか否かを判断する方法はあるか考えよう.

例 1.4.3       

\begin{displaymath}
f(x)=a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots+a_0
\end{displaymath}

とおく.

\begin{displaymath}
f(\alpha)=f'(\alpha)=0
\end{displaymath}

なら,$f(x)=0$$x=\alpha$ を重根にもつ.

証明 $f(x)$$(x-\alpha)^2$ で割った商を $Q(x)$ ,余りを $ax+b$ とする.

\begin{displaymath}
f(x)=(x-\alpha)^2Q(x)+ax+b
\end{displaymath} (1.1)

ここで $a$$b$$f(\alpha)$$f'(\alpha)$ で表す.

まず $f(\alpha)=a\alpha+b$ .次に 等式1.1の両辺を $x$ で微分する.

\begin{displaymath}
f'(x)=2(x-\alpha)Q(x)+(x-\alpha)^2Q'(x)+a
\end{displaymath}

ゆえに$f'(\alpha)=a$ .よって $b=f(\alpha)-a\alpha=f(\alpha)-f'(\alpha)\alpha$

したがって $(x-\alpha)^2$ で割った余りは

\begin{displaymath}
f'(\alpha)x+f(\alpha)-f'(\alpha)\alpha=f'(\alpha)(x-\alpha)+f(\alpha)
\end{displaymath}

である.

したがって,条件

\begin{displaymath}
f(\alpha)=f'(\alpha)=0
\end{displaymath}

と, $f(x)$$(x-\alpha)^2$ で割った余りが0となり $f(x)=(x-\alpha)^2Q(x)$ と因数分解され$x=\alpha$ が重根になることが, 同値である.□

耕一  $f(x)$$(x-\alpha)^2$ で割った余りは1次式で,それはちょうど $y=f(x)$$x=\alpha$ での接線の式になるのだ.

\begin{displaymath}
f(x)-[x=\alpha での接線の式]=0
\end{displaymath}

$x=\alpha$ を重解にもち$(x-\alpha)^2$ で割りきれるはずだからそれは当然ですね.

南海  当然ではあるが,出てきた結果を解釈し感心するというのは数学にとっては大切なことだ.

耕一  でも最初に戻って,この例題では, 与えられた$x=\alpha$ が重根かどうかを判断することはできても, $f(x)=0$ が重根をもつかどうかは,わかりません.

南海  その通りだ. しかし,この例題から$f(x)=0$ が重根 $\alpha$ をもつならそれは $f'(x)=0$ の根でもある. だから, $f(x)=0$ の重根 $\alpha$$f(x)$$f'(x)$ の共通因数を $g(x)$ と するとき, $g(x)=0$ の根であることがわかる. $f(x)$$f'(x)$ が定数でない共通因数 $g(x)$ をもつかどうかは判断できるではないか.

$f(x)$$f'(x)$ の共通因数 ,つまり$f(x)$$f'(x)$ の公約数を見つける一般的な方法が ユークリッドの互除法である.

耕一  そうか. $f(x)$$f'(x)$ が互いに素なら $f(x)=0$ に重根はなく,あるとすれば それは $f(x)$$f'(x)$ の公約数を $g(x)$ とするとき, $g(x)=0$ の根だ. そして公約数 $g(x)$ はユークリッドの互除法で求まる. それで重根をもつかどうかが判断できる.

南海  ちなみに

\begin{displaymath}
x^4+6x^3+11x^2+12x+18=0
\end{displaymath}

に重根はあるかこの方法で判断してみよう.

耕一  $f(x)=x^4+6x^3+11x^2+12x+18$ とします.

\begin{eqnarray*}
f'(x)&=&4x^3+18x^2+22x+12\\
f(x)&=&f'(x) \left(\dfrac{1}{4}x+...
...}{25} \right)+\dfrac{1936}{25}(x+3)\\
5x^2-3x-54&=&(x+3)(5x-18)
\end{eqnarray*}

したがって $f(x)$$f'(x)$ は公約数 $(x+3)$ をもちます.実際

\begin{displaymath}
f(x)=(x+3)^2(x^2+2)
\end{displaymath}

南海  もちろん $f(-3)=0$ を見つければ因数分解はできるのだが, このような計算を一度やっておくことは大切だ.上の互除法で で割らずに, $5x^2-3x-54$ で割ったところが重要だ. ユークリッドの互除法で式の公約数を求める場合,定数倍だけ違うどれを余りとして 用いても同じことになる.

耕一  式の因数分解は

\begin{displaymath}
x^2-3x+2=(x-2)(x-1)=\left(\dfrac{1}{2}x-1\right)(2x-2)=\cdots
\end{displaymath}

のように,定数倍の違いだけの自由さがあり,定数倍の違いを除いて始めて一意に決まります. だから, で割っても, $5x^2-3x-54$ で割っても,公約数の有無 は変わりません.


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