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整数と整式の類似

太郎  2006年の京都大学の入学試験で,前期後期とも文理共通で, 整式の問題が出されました,

南海  次のものだな.演習問題として紹介しよう.

演習 1   【06京大文理系前期1番3番】

$Q(x)$を2次式とする.整式$P(x)$$Q(x)$では割り切れないが, $\{P(x)\}^2$$Q(x)$で割り切れるという. このとき2次方程式$Q(x)=0$は重解を持つことを示せ.

演習 2   【06京大文理系後期1番3番】

1次式$A(x)$$B(x)$$C(x)$に対して $\{A(x)\}^2+\{B(x)\}^2=\{C(x)\}^2$が成り立つとする. このとき$A(x)$$B(x)$はともに$C(x)$の定数倍であることを示せ.

太郎  それには,それぞれ2つの解法があって, 一つは整式の多項式としての性質を用いるもの, 一つは整式の数論によるものでした. その解説に次のようにありました.

整式では、整数と同じく因数分解ができ, かつ素因数分解の(定数倍を除く)一意性が成り立つ. 解2はこれを根拠とした解法である.はるかに簡明である. ただし,なぜ整式でも素因数分解の一意性がなり立つのか. それは整式でも除法の原理が成り立つからであり, 結局は整数の場合と同じく,除法の原理が成立することが根拠なのである.

この後半の,除法の原理を根拠として,整式も整数と同じように考えられる, というところが,よくわかりません.

南海  『数論初歩』を読んで,その論証の仕組みを調べれば次のことがわかる.

初等整数論の基礎である,約数・倍数などの整除に関する基本性質の成立, 素因数分解の一意性や,一次不定方程式の解の存在と構成などが, すべて,整数の集合のなかでは除法ができて商と余りが一意に決まることの根拠となっている.
とはいっても,自分で確かめるのはなかなか大変であるから, ここで改めて整数の場合の論証の仕組みをふりかえり, そのうえで,整式の場合に同様の事実が成立することを確認しよう.



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