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楕円と円,$n=4$の場合

南海  $n=4$ についても同様にするためには,「消去法」が必要で, これは私の方から提起したい.次の問題である.

補題 2

$s$ に関する2つの二次式

\begin{displaymath}
As^2+Bs+C=0, \ A's^2+B's+C'=0
\end{displaymath}

から $s$ を消去すれば

\begin{displaymath}
(AC'-A'C)^2=(BC'-B'C)(AB'-A'B)
\end{displaymath}

となる.

証明

$As^2+Bs=-C, \ A's^2+B's=-C'$ より,

\begin{displaymath}
AA's^2+BA's=-A'C, \ AA's^2+AB's=-AC'
\end{displaymath}


\begin{displaymath}
∴\quad (BA'-B'A)s=AC'-A'C\cdots\maru{1}
\end{displaymath}

また,

\begin{displaymath}
AB's^2+BB's=-B'C, \ A'Bs^2+BB's=-BC'
\end{displaymath}


\begin{displaymath}
∴\quad (AB'-A'B)s^2=BC'-B'C
\end{displaymath}

そこで, の両辺に $AB'-A'B$ をかけると, の左辺の2乗に一致する. すなわち,

\begin{displaymath}
(AB'-A'B)(BC'-B'C)=(AB'-A'B)^2s^2=(AC'-A'C)^2
\end{displaymath}

である.□

南海  さて,$n=4$のときは,$T(t,\ s)=0$$T(s,\ u)=0$を考える. これから$s$を消去する. すると$\mathrm{P}$から2回目の操作で定まる点の座標を与える2次方程式が得られるはずだ.

この2次方程式が重解をもてば,つまり図で$u_1=u_2$となれば,確かに4回で閉じる. それが$\mathrm{P}$を頂点とし,$C_0$に外接し,$C_1$に内接する四角形が存在するための$\mathrm{P}$ に関する必要十分条件になるはずだ.

拓生  やってみます.

$T(t,\ s)=0,\ T(s,\ u)=0$ から $s$ を消去し, $t \ne u$ の条件の下で $t,\ u$ の関係式を求める.

\begin{eqnarray*}
&&T(t,\ s) \\
&=&(a^2+b^2t^2-a^2b^2t^2)s^2+2(a^2-b^2-a^2b^2...
...^2u^2)s^2 \\
&& \quad +2(a^2-b^2-a^2b^2)us+(a^2u^2+b^2-a^2b^2)
\end{eqnarray*}

となるから, これより $s$ を消去する.

\begin{eqnarray*}
&& (AC'-A'C)^2 \\
&=&\{(a^2+b^2t^2-a^2b^2t^2)(a^2u^2+b^2-a^...
...2)ut(u-t)\} \\
&=&2(a^2-b^2-a^2b^2)(u-t)\{a^2-(b^2-a^2b^2)ut\}
\end{eqnarray*}

よって,

\begin{eqnarray*}
&& \{(t+u)(t-u)(a^2b^2-b^2+a^2)(a^2b^2-b^2-a^2)\}^2 \\
&=&2...
...
&& \quad \times \,2(a^2-b^2-a^2b^2)(u-t)\{a^2-(b^2-a^2b^2)ut\}
\end{eqnarray*}
ゆえに


したがって, $t \ne u$ より,

\begin{eqnarray*}
&& (t+u)^2(a^2-b^2+a^2b^2)^2(a^2+b^2-a^2b^2)^2 \\
&=&4(a^2-...
...^2(b^2-a^2b^2)t^2u^2+\{a^4+(b^2-a^2b^2)^2\}ut
-a^2(b^2-a^2b^2)]
\end{eqnarray*}

さて,$\mathrm{P}$ を一つの頂点とし, $C_0$ に外接しかつ $C_1$ に内接する四辺形がつくられるための 条件は, 今求めた等式を$u$に関する二次方程式と見たとき,$u$ がただ一つだけ存在することである. そこで, この等式を $u$ について整理する.

\begin{eqnarray*}
&&\{(a^2-b^2+a^2b^2)^2(a^2+b^2-a^2b^2)^2
+4a^2(a^2-b^2-a^2b^...
...^2b^2)^2(b^2-a^2b^2)
+(a^2-b^2+a^2b^2)^2(a^2+b^2-a^2b^2)^2t^2=0
\end{eqnarray*}

すなわち,

\begin{eqnarray*}
&&[\{a^4-b^4(1-a^2)^2\}^2
+4a^2b^2\{a^2-b^2(1+a^2)\}^2(1-a^2...
...4a^2b^2(1-a^2)\{a^2-b^2(1+a^2)\}^2
+\{a^4-b^4(1-a^2)^2\}^2t^2=0
\end{eqnarray*}

となる.この$u$ の二次方程式の判別式を $D_2$ とおく.

\begin{eqnarray*}
D_2/4
&=&t^2[\{a^4-b^4(1-a^2)^2\}^2-2\{a^2-b^2(1+a^2)\}^2\{a...
...&\quad -4a^2b^2(1-a^2)\{a^2-b^2(1+a^2)\}^2\{a^4-b^4(1-a^2)^2\}^2
\end{eqnarray*}

そこで, $t^2$ の係数を因数分解すると,

\begin{eqnarray*}
&&4\{a^2-b^2(1+a^2)\}^4\{a^4+b^4(1-a^2)^2\}^2 \\
&&\quad -4...
...b^2(1+a^2)\}^2\{a^4-b^4(1-a^2)^2\}^2\,\cdot\,2a^2b^2(2b^2-a^2-1)
\end{eqnarray*}

したがって,


となる.

拓生  $D_2/4=0$$t$が満たすべき条件式です.

そこで,

 


とします.

ここで   の二次式


の判別式を$D$とすると,

\begin{eqnarray*}
D/4&=&(2b^2-a^2-1)^2-(a^2-1)^2\\
&=&4(b^2-a^2)(b^2-1)
\end{eqnarray*}

$1<b$なので,$a>b$なら$D<0$である.

$a\le b$のとき,$H(t)$$t^2$の二次式と見たときの軸は

\begin{displaymath}
-\dfrac{2b^2-a^2-1}{a^2-1}=-\dfrac{b^2-a^2+b^2-1}{a^2-1}<0
\end{displaymath}

となる.$H(t)$$t^2$の二次方程式と見たときの2解の積は1なので, この場合$t^2$の2次方程式は負の2解をもつ. つまり$H(t)=0$$t$の4次方程式として実数解をもたない.

よってもし$H(t)=0$となる$t$が1点でも存在すれば, $H(t)$が恒等的に0とならねばならない.

このとき任意の$t$に対して$\mathrm{P}$を頂点とする四辺形が存在する. よって, 求める条件は,

\begin{eqnarray*}
&&\{a^2-b^2(1+a^2)\}\{a^4-b^4(1-a^2)^2\} \\
&=&(a^2-b^2-a^2b^2)(a^2+b^2-a^2b^2)(a^2-b^2+a^2b^2)=0
\end{eqnarray*}

そして, $a>1, \ b>1$ なので,

\begin{displaymath}
a^2+b^2-a^2b^2=0
\quad\Longrightarrow \quad
\dfrac{1}{a^2}+\dfrac{1}{b^2}=1
\end{displaymath}

となる.□

南海  ここで得られた条件は,東大の問題の結果と同じだ.


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