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楕円と円で$n=3$の場合

南海  それでは次に円と楕円の場合に進もう. 東大の過去問もあるので$n=3$の場合だけではなく$n=4$の場合も考えたい.

$n=3$の場合は基本的には円と円の場合と同様だ.

例 1.7.6  

$xy$ 平面の円と楕円 $C_0\ :\ x^2+y^2=1,\ C_1\ :\ \dfrac{x^2}{a^2}+ \dfrac{y^2}{b^2}=1$がある.

定数は条件$1<a,\ 1<b$ を満たしているとする.

$C_1$ 上の一点 $\mathrm{P}$ から $C_0$ にひとつの接線をひき, その延長が再び $C_1$ と交わる点を $\mathrm{Q}$ とする. $\mathrm{Q}$ から $C_0$$\mathrm{PQ}$ とは異なる接線をひき, その延長が再び $C_1$ と交わる点を $\mathrm{R}$ とする. $\mathrm{R}$ から $C_0$$\mathrm{QR}$ とは異なる接線をひき, その延長が再び $C_1$ と交わる点を $\mathrm{S}$ とする.

  1. $C_1$上の点$\mathrm{P}$$(-a,\ 0)$を除き $\left(\dfrac{a(1-t^2)}{1+t^2},\ \dfrac{2bt}{1+t^2} \right)$と媒介変数表示できることを示せ.

    また, $\mathrm{P}\left(\dfrac{a(1-t^2)}{1+t^2},\ \dfrac{2bt}{1+t^2} \right)$Q とするとき,直線 $\mathrm{PQ}$$C_0$ と接するための$t$$s$に関する条件を求めよ.

  2. $\mathrm{S=P}$となるために$t$が満たすべき必要条件を求めよ.
  3. (2)の方程式は少なくとも一つの実数解をもてば恒等式になることを示し. ある点$\mathrm{P}$$\mathrm{S=P}$となれば, 任意の点$\mathrm{P}$$\mathrm{S=P}$となることを示せ.

拓生 

これもできそうです.

解答

(1)

楕円 $C_1$ 上の点の座標は と表されるので, これを $t$ で表すと,

\begin{displaymath}
\left( \dfrac{a(1-t^2)}{1+t^2},\ \dfrac{2bt}{1+t^2}\right)
\end{displaymath}

となる. ただし, $\theta=\pi$ に対応する点, すなわち $(-a,\ 0)$ は表し得ない.

\begin{displaymath}
\mathrm{P}\left( \dfrac{a(1-t^2)}{1+t^2},\
\dfrac{2bt}{1+t^...
...frac{a(1-s^2)}{1+s^2},\ \dfrac{2bs}{1+s^2}\right)\quad(t\ne s)
\end{displaymath}

とおくと, 直線 $\mathrm{PQ}$ の方程式は,

\begin{eqnarray*}
&& \left( \dfrac{2bs}{1+s^2}- \dfrac{2bt}{1+t^2}\right)
\lef...
...dfrac{a(1-t^2)}{1+t^2}\right\}\left(y- \dfrac{2bt}{1+t^2}\right)
\end{eqnarray*}

\begin{eqnarray*}
&&∴\,\, 2b\{s(1+t^2)-t(1+s^2)\}\{(1+t^2)x-a(1-t^2)\} \\
&&\quad \quad -a\{(1-s^2)(1+t^2)-(1-t^2)(1+s^2)\}\{(1+t^2)y-2bt\}=0
\end{eqnarray*}

ここで,

\begin{eqnarray*}
&&s(1+t^2)-t(1+s^2)\\
&=&(s-t)-st(s-t)=(s-t)(1-st) \\
&&(1-s^2)(1+t^2)-(1-t^2)(1+s^2)\\
&=&-2(s^2-t^2)=-2(s-t)(s+t)
\end{eqnarray*}

であり, $s\ne t$ であるから,

\begin{displaymath}
\mathrm{PQ}\,:\,b(1-st)\{(1+t^2)x-a(1-t^2)\}+a(s+t)\{(1+t^2)y-2bt\}=0
\end{displaymath}

この定数項を計算すると,

\begin{eqnarray*}
&&-ab(1-st)(1-t^2)-2ab(s+t)t \\
&=&-ab(1+st+t^2+st^3)=-ab(1+st)(1+t^2)
\end{eqnarray*}

となるので,

\begin{displaymath}
\mathrm{PQ}\,:\,b(1-st)x+a(s+t)y-ab(1+st)=0
\end{displaymath}

これが円 $C_0$ と接するための必要十分条件は, 原点とこの直線との距離が1になる ことであるから,求める必要十分条件は

\begin{displaymath}
\dfrac{\vert\,ab(1+st)\,\vert}{\sqrt{b^2(1-st)^2+a^2(s+t)^2}}=1
\end{displaymath}


\begin{displaymath}
b^2(1-st)^2+a^2(s+t)^2-a^2b^2(1+st)^2=0
\end{displaymath}

が求める条件である.

(2)


\begin{displaymath}
T(t,\ s)=a^2(s+t)^2+b^2(1-st)^2-a^2b^2(1+st)^2=0
\end{displaymath}

とおく.これを$s$について整理する.

\begin{displaymath}
T(t,\ s)=(a^2+b^2t^2-a^2b^2t^2)s^2+2(a^2-b^2-a^2b^2)ts+(a^2t^2+b^2-a^2b^2)
\end{displaymath}

で, $T(t,\ s)=0$$t,\ s$ の両方に関する二次以下の方程式である.

ある実数 $t$ に対して, この方程式を $s$ についての方程式とみたときの 解 $s$ が, $\mathrm{P}(t)$ から円 $C_0$ に引いた接線が $C_1$ と交わった ときの $C_1$ 上の点 $\mathrm{Q}$ を与える.

ここで(2)の条件式をで割る.

\begin{displaymath}
b^2\left(\dfrac{1}{s}-t\right)^2+a^2\left(1+\dfrac{t}{s}\right)^2-a^2b^2\left(\dfrac{1}{s}+t\right)^2=0
\end{displaymath}

$\dfrac{1}{s}=0$とすると

\begin{displaymath}
b^2t^2+a^2-a^2b^2t^2=0
\end{displaymath}

$\dfrac{1}{s}\ne 0$なので

\begin{displaymath}
b^2t^2+a^2-a^2b^2t^2\ne 0
\end{displaymath}

したがって $T(t,\ s)=0$$s$の二次方程式で, $s_1,\ s_2$ がその2解となるので, 解と係数の関係より,

\begin{displaymath}
s_1+s_2= \dfrac{-2(a^2-b^2-a^2b^2)t}{a^2+b^2t^2-a^2b^2t^2},\quad
s_1s_2= \dfrac{a^2t^2+b^2-a^2b^2}{a^2+b^2t^2-a^2b^2t^2}
\end{displaymath}

$\mathrm{P}$が満たすべき条件は円と円の場合と同様に

\begin{displaymath}
T(s_1,\ s_2)=0
\end{displaymath}

となることである.

ところで,

\begin{eqnarray*}
T(s_1,\ s_2)
&=&a^2\left\{\dfrac{-2t(a^2-b^2-a^2b^2)}{a^2+b^...
... \quad \quad -a^2b^2(a^2+b^2t^2-a^2b^2t^2+a^2t^2+b^2-a^2b^2)^2\}
\end{eqnarray*}

そこで, この $\{\quad\}$ 内を$H(t)$とおく.これを$t$ の式として整理すると,

\begin{eqnarray*}
H(t)&=&\{b^2(a^2-b^2+a^2b^2)^2-a^2b^2(a^2+b^2-a^2b^2)^2\}t^4 ...
...t^2 \\
&&\quad +b^2(a^2-b^2+a^2b^2)^2-a^2b^2(a^2+b^2-a^2b^2)^2
\end{eqnarray*}

となる. この各項の係数を因数分解する. $t^4$ の係数と定数係数は同一で,

\begin{eqnarray*}
&&b^2(a^2-b^2+a^2b^2)^2-a^2b^2(a^2+b^2-a^2b^2)^2 \\
&=&(a^2...
...a)(ab+b-a) \\
&=&b^2(1+a)(1-a)(ab+a+b)(ab+a-b)(ab-a+b)(ab-a-b)
\end{eqnarray*}

また, $t^2$ の係数について,

\begin{eqnarray*}
&&2a^2(a^2-b^2-a^2b^2)^2-b^2(a^2-b^2+a^2b^2)^2-a^2b^2(a^2+b^2...
...2\} \\
&&\quad +b^2(a^2-b^2+a^2b^2)^2-a^2b^2(a^2+b^2-a^2b^2)^2
\end{eqnarray*}

ここで,

\begin{eqnarray*}
&&a^2(a^2-b^2-a^2b^2)^2-b^2(a^2-b^2+a^2b^2)^2 \\
&=&(a^3-ab...
...b+ab)(a-b-ab) \\
&=&(a+b)(a-b)(ab+a+b)(ab+a-b)(ab-a+b)(ab-a-b)
\end{eqnarray*}

であるから,

\begin{eqnarray*}
&&2a^2(a^2-b^2-a^2b^2)^2-b^2(a^2-b^2+a^2b^2)^2-a^2b^2(a^2+b^2...
...a^2)\} \\
&=&(ab+a+b)(ab+a-b)(ab-a+b)(ab-a-b)(2a^2-b^2-a^2b^2)
\end{eqnarray*}

したがって

\begin{eqnarray*}
H(t)&=&(ab+a+b)(ab+a-b)(ab-a+b)(ab-a-b) \\
&&\quad \times \{b^2(1-a^2)t^4+2(2a^2-b^2-a^2b^2)t^2+b^2(1-a^2)\}
\end{eqnarray*}

条件は$H(t)=0$である.

(3)

\begin{displaymath}
b^2(1-a^2)t^4+2(2a^2-b^2-a^2b^2)t^2+b^2(1-a^2)=0
\end{displaymath}

の判別式をとると

\begin{displaymath}
D/4=(2a^2-b^2-a^2b^2)^2-b^4(1-a^2)^2=4a^2(a^2-b^2)(1-b^2)
\end{displaymath}

$1<b$なので,$a>b$なら$D<0$である.

$a\le b$のとき,$H(t)$$t^2$の二次式と見たときの軸は

\begin{displaymath}
-\dfrac{2a^2-b^2-a^2b^2}{b^2(1-a^2)}=-\dfrac{a^2-b^2+a^2(1-b^2)}{b^2(1-a^2)}<0
\end{displaymath}

となる.(2)の条件式は$t^4$の係数が0でないので,$t^2$の二次方程式となる. その二次方程式の2解の積は1なので, この場合$t^2$の二次方程式は負の2解をもつ. つまり(2)の条件式は$t$の四次方程式として実数解をもたない.

ところが少なくとも一つ$\mathrm{S=P}$となる点$\mathrm{P}$が存在した. ゆえに(2)の条件式は恒等的に0でなければならず,

\begin{displaymath}
(ab+a+b)(ab+a-b)(ab-a+b)(ab-a-b)=0
\end{displaymath}

である.$a>1, \ b>1$ だから,

\begin{eqnarray*}
&&ab+a+b>0 \\
&&ab+a-b=b(a-1)+a>0 \\
&&ab-a+b=a(b-1)+b>0
\end{eqnarray*}

したがって, 求める条件は,

\begin{displaymath}
ab=a+b\quad\Longrightarrow \quad\dfrac{1}{a}+\dfrac{1}{b}=1
\end{displaymath}

である.□


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