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空間内の平面と直線

南海  さて以上の議論を空間内の,つまりは3次元の場合に拡張せよ.これが問題だ. 空間の場合には,平面における直線と対応するのは,空間における平面である. 平面の定め方も二通りある.

耕一  第一は,同一直線上にない三点で平面が定まる. 第二は,ある点をとおり,与えられたベクトルに垂直な直線の全体が一つの平面となる.

ということです.それぞれどのような式になるかを考えます.

空間内の平面(その一)


耕一  空間に同一直線上にない3点, $\mathrm{A}(a_1,\ a_2,\ a_3)$ $\mathrm{B}(b_1,\ b_2,\ b_3)$ $\mathrm{C}(c_1,\ c_2,\ c_3)$ がある. 点 $\mathrm{P}(x,\ y,\ z)$がこの三点で定まる平面上にあるための必要十分条件を $x,\ y,\ z$ の関係式で書けば,それが求める平面の方程式です.

これはベクトル $\overrightarrow{\mathrm{AP}}$が ベクトル $\overrightarrow{\mathrm{AB}}$と ベクトル $\overrightarrow{\mathrm{AC}}$でかき表せることと同値です. これを

\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{AP}}=t\overrightarrow{\mathrm{AB}}+u\overrightarrow{\mathrm{AC}}
\end{displaymath}

とおき,始点を$\mathrm{O}$にそろえると

\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{OP}}
=(1-t-u)\overrightarrow{\math...
...}+t\overrightarrow{\mathrm{OB}}+u\overrightarrow{\mathrm{OC}}
\end{displaymath}

となります. このことから, 点 $\mathrm{P}(x,\ y,\ z)$が, 3点 $\mathrm{A}(a_1,\ a_2,\ a_3)$ $\mathrm{B}(b_1,\ b_2,\ b_3)$ $\mathrm{C}(c_1,\ c_2,\ c_3)$ で定まる平面上にあるための必要十分条件を次のようにいってもよいことがわかります.つまり

\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{OP}}
=s\overrightarrow{\mathrm{OA}}+t\overrightarrow{\mathrm{OB}}+u\overrightarrow{\mathrm{OC}}
\end{displaymath}

とおくとき,点 $\mathrm{P}$ がこの平面上にあるための必要十分条件は

\begin{displaymath}
s+t+u=1
\end{displaymath}

である. この条件を成分で書くと

\begin{eqnarray*}
\left(
\begin{array}{c}
x\\ y\\ z
\end{array}
\right)&...
...)
\left(
\begin{array}{c}
s\\ t\\ u
\end{array}
\right)
\end{eqnarray*}

これから

\begin{displaymath}
\left(
\begin{array}{c}
s\\ t\\ u
\end{array}
\right...
...
\left(
\begin{array}{c}
x\\ y\\ z
\end{array}
\right)
\end{displaymath}

によって, $s,\ t,\ u$$x,\ y,\ z$ で表し, $s+t+u=1$ に代入すれば, 平面の方程式が得られる.

南海  高校範囲では$3\times 3$ 行列の逆行列は求まらないが, 空間における平面の方程式が

\begin{displaymath}
ax+by+cz+d=0
\end{displaymath}

という形の1次の等式になることはわかった.

次の3点をとおる平面の方程式をいろんな方法で求めてみよう.

例 1.1        3点で定まる平面の方程式;
  1. $\mathrm{A}(-1,\ 1,\ 2)$ $\mathrm{B}(1,\ 2,\ -1)$ $\mathrm{C}(2,\ -1,\ 1)$

    \begin{displaymath}
x+y+z=2
\end{displaymath}

  2. $\mathrm{A}(a,\ 0,\ 0)$ $\mathrm{B}(0,\ b,\ 0)$ $\mathrm{C}(0,\ 0,\ c)$

    \begin{displaymath}
\dfrac{x}{a}+\dfrac{y}{b}+\dfrac{z}{c}=1
\end{displaymath}

  3. $\mathrm{A}(a,\ b,\ 0)$ $\mathrm{B}(a,\ 0,\ c)$ $\mathrm{C}(0,\ b,\ c)$

    \begin{displaymath}
\dfrac{a-x}{a}+\dfrac{b-y}{b}+\dfrac{c-z}{c}=1
\end{displaymath}

南海  もっとも,3次の行列式を用いれば平面の方程式を一般的な形に書くことが出来る.

$\mathrm{P}(x,\ y,\ z)$ が3点 $\mathrm{A}(a_1,\ a_2,\ a_3)$ $\mathrm{B}(b_1,\ b_2,\ b_3)$ $\mathrm{C}(c_1,\ c_2,\ c_3)$で定まる平面上にあることと, ベクトル $\overrightarrow{\mathrm{AP}}$が ベクトル $\overrightarrow{\mathrm{AB}}$と ベクトル $\overrightarrow{\mathrm{AC}}$でかき表せること, 言いかえれば,三つのベクトル $\overrightarrow{\mathrm{AP}},\ \overrightarrow{\mathrm{AB}},\ \overrightarrow{\mathrm{AC}}$が一次従属ということとが同値だ. したがってその行列式は0,つまり

\begin{displaymath}
\left\vert
\begin{array}{ccc}
x-a_1&b_1-a_1&c_1-a_1\\ ...
...&c_2-a_2\\ z-a_3&b_3-a_3&c_3-a_3
\end{array}
\right\vert=0
\end{displaymath} (4)

である.これが3点を通る平面の方程式だ. この一般論は『線型代数の考え方』を見てほしい.

耕一  これが,

\begin{displaymath}
\left(
\begin{array}{c}
s\\ t\\ u
\end{array}
\right...
...
\left(
\begin{array}{c}
x\\ y\\ z
\end{array}
\right)
\end{displaymath} (5)

で定まる$s,\ t,\ u$$s+t+u=1$に代入した式と一致するのですか.

南海  次のように考えればよい.行列式展開の計算から (4)は

\begin{displaymath}
\left\vert\begin{array}{ccc}
x&a_1&b_1\\ y&a_2&b_2\\ z&a_...
...1&b_1&c_1\\ a_2&b_2&c_2\\ a_3&b_3&c_3
\end{array}\right\vert
\end{displaymath}

と変形される.ただし展開と考えなくても,この等式は, $\mathrm{P}(x,\ y,\ z)$にA,B,Cの座標値を代入して成立するので, この3点を通る平面の方程式であることがわかる.

次に5$s,\ t,\ u$に関する連立1次方程式と見れば

\begin{displaymath}
s=\dfrac{\left\vert\begin{array}{ccc}
x&b_1&c_1\\ y&b_2&c...
...&b_1&c_1\\ a_2&b_2&c_2\\ a_3&b_3&c_3
\end{array}\right\vert}
\end{displaymath}

となる.ここは『線型代数の考え方』「クラメルの公式」を見てほしい. それからさらに列を入れ替えると,$s+t+u=1$を満たすこととの同値性が分かる.

もっとも(4)も(5)も3つのベクトル $\overrightarrow{\mathrm{AP}},\ \overrightarrow{\mathrm{AB}},\ \overrightarrow{\mathrm{AC}}$ が1次従属になる条件の同値な変形なのだから, 互いに同値な条件であること,したがって方程式も一致する.

空間内の平面(その二)


南海  平面はもう一つの定義がある. それは線型空間では直交補空間といわれるのであるが, 定点を通り, 点と定点を結ぶ直線があたえられた方向と直交するような点の集合としての平面である.

この立場から定点 $\mathrm{P}_0(x_0,\ y_0,\ z_0)$ をとおり, ベクトル $\overrightarrow{n}=(p,\ q,\ r)$ に直交する平面 $\alpha$ の方程式を求めよ.

耕一  平面上の任意の点 $\mathrm{P}(x,\ y,\ z)$ をとる. 二つのベクトル $\overrightarrow{n}=(p,\ q,\ r)$ $\overrightarrow{\mathrm{P}_0\mathrm{P}}$ が直交するので内積が0. $\overrightarrow{\mathrm{P}_0\mathrm{P}}=(x-x_0,\ y-y_0,\ z-z_0)$ なので

\begin{displaymath}
\alpha\ :\ p(x-x_0)+q(y-y_0)+r(z-z_0)=0
\end{displaymath}

です. このベクトル $\overrightarrow{n}=(p,\ q,\ r)$ のことを 平面 $\alpha$法線ベクトルという.

南海  逆に一次式 $px+qy+rz+s=0$ を満たす点 $(x,\ y,\ z)$ はどんな図形になるかも同様にわかる.

耕一  この式を満たす任意の2点 $\mathrm{P}_0(x_0,\ y_0,\ z_0),\ \mathrm{P}_1(x_1,\ y_1,\ z_1)$ をとる.

\begin{displaymath}
\begin{array}{l}
px_1+qy_1+rz_1+s=0\\
px_0+qy_0+rz_0+s=0
\end{array}
\end{displaymath}

より

\begin{displaymath}
p(x_1-x_0)+q(y_1-y_0)+r(z_1-z_0)=0
\end{displaymath}

つまりベクトル $(p,\ q,\ r)$と直線 $\overrightarrow{\mathrm{P}_0\mathrm{P}_1}$ が直交している. したがって求める図形は点 $(x_0,\ y_0,\ z_0)$ をとおりベクトル$(p,\ q,\ r)$ と直交する直線の集合, 平面になる.

空間の点と平面の距離の公式も,点と直線の場合と同様に求められる.

例題 1.2        点 $\mathrm{P}(x_1,\ y_1,\ z_1)$と平面 $\alpha:ax+by+cz+d=0$の距離$l$を求めよ.

耕一  点$\mathrm{P}$から平面$\alpha$への垂線の足を $\mathrm{H}(x_0,\ y_0,\ z_0)$とする. ベクトル $\overrightarrow{\mathrm{PH}}$は平面$\alpha$と直交するので,

\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{PH}}=k(a,\ b,\ c)
\end{displaymath}

これから

\begin{displaymath}
(x_0-x_1,\ y_0-y_1,\ z_0-z_1)=(ka,\ kb,\ kc)
\end{displaymath}

つまり

\begin{displaymath}
x_0=x_1+ka,\
y_0=y_1+kb,\
z_0=z_1+kc
\end{displaymath}

$\mathrm{H}$は平面$\alpha$上にあるので

\begin{displaymath}
a(x_1+ka)+b(y_1+kb)+c(z_1+kc)+d=0
\end{displaymath}

$a^2+b^2+c^2\ne 0$なので

\begin{displaymath}
k=-\dfrac{ax_1+by_1+cz_1+d}{a^2+b^2+c^2}
\end{displaymath}

である. 一方

\begin{displaymath}
l^2=\vert\overrightarrow{\mathrm{PH}}\vert^2=k^2(a^2+b^2+c^2)
\end{displaymath}

であるから

\begin{displaymath}
l^2=\left(-\dfrac{ax_1+by_1+cz_1+d}{a^2+b^2+c^2} \right)^2(a^2+b^2+c^2)
=\dfrac{(ax_1+by_1+cz_1+d)^2}{a^2+b^2+c^2}
\end{displaymath}

となる.よって

\begin{displaymath}
l=\dfrac{\vert ax_1+by_1+cz_1+d\vert}{\sqrt{a^2+b^2+c^2}}
\end{displaymath}

である.

空間内の直線


耕一  では空間内の直線はどのように表されるのでしょうか.

南海  空間における直線は二つの平行でない平面の交わりによって定まる.だから 方程式としては,二つの一次式の連立で表される.

例えば

\begin{displaymath}
\left\{
\begin{array}{l}
x+y+2z+1=0\\
2x-y+z-1=0
\end{array}
\right.
\end{displaymath} (6)

なども二平面の交わりとして何らかの直線を表す.しかしそれがどのような直線かは このままではわからない.

耕一  点$\mathrm{P}_0$をとおりベクトル $\overrightarrow{u}=(l,\ m,\ n)$ に平行な直線は 動点を $\mathrm{P}$ とすれば

\begin{displaymath}
\overrightarrow{\mathrm{OP}}=\overrightarrow{\mathrm{OP}_0}+t\overrightarrow{u}
\end{displaymath}

と表されます.

南海  それを座標で書くとどうなるか.

耕一 

\begin{displaymath}
\left(
\begin{array}{c}
x\\ y\\ z
\end{array}
\right...
...t\left(
\begin{array}{c}
l\\ m\\ n
\end{array}
\right)
\end{displaymath}

です.そうすると

\begin{displaymath}
x-x_0=tl,\ y-y_0=tm,\ z-z_0=tn
\end{displaymath}

ですから $t$ を消去すると
\begin{displaymath}
\dfrac{x-x_0}{l}=\dfrac{y-y_0}{m}=\dfrac{z-z_0}{n}
\end{displaymath} (7)

ですか.確かに等号が二つある.

南海  この考え方でいくと(6)はどんな直線なのか.

耕一  二式を加えると$x=-z$.これから $y+1=x$ .これを(7)の形に書くと

\begin{displaymath}
x=-z=y+1
\end{displaymath}

するとこれは定点 $(0,\ -1,\ 0)$ をとおりベクトル $(1,\ 1,\ -1)$ に平行な直線なんだ.ベクトルを用いて書けば

\begin{displaymath}
\left(
\begin{array}{c}
x\\ y\\ z
\end{array}
\right...
...\left(
\begin{array}{c}
1\\ 1\\ -1
\end{array}
\right)
\end{displaymath}

ということです.

例 1.2       平面で定まる直線の方向;
  1. 直線 $6x-2y+2z-7=0,\ 12x-y-2z+1=0$$(1,\ 6,\ 3)$ に平行.
  2. 直線$x=2y+3,\ z=1$$(2,\ 1,\ 0)$ に平行.


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Aozora 2018-08-31