南海 なかなかよく写っている. これは左側からガラスコップに太陽の光があたって, その光線がガラスコップの内側で全反射してできた曲線だ.
耕一 この境界を作る曲線がどのような曲線か知りたいのです.
南海 そのためには,明るいところと暗いところのできるわけを知らねばならない.
耕一 確かに. なぜこのような曲線ができるのですか.
南海 おそらく, 光線が入射角と反射角が等しいという反射の原理によって, コップの内側で反射し,その反射光線が少しずつずれていくことで, 多くの光線が密集するところと,そうでないところができ, 水の中の粒子に多くの光が当たるところが明るくなり,曲線が浮かびあがるのだろう.
耕一 反射光線のいちばん密になるのが,反射光線が通過していく境界ですね. この境界の曲線って,反射光線による包絡線ではありませんか.
南海 そう考えてよい. 包絡線は,光線の通過領域の境界線であって, 光線がその曲線に接して動いていくので, 通過領域側が明るくなる. さらに境界がいちばん明るくなるのは,それだけ多くの光がその場を通るからだと考えられる. 直線群が接している曲線をこの直線群の包絡線と言うんだ.
耕一 包絡線は 『数学対話』-「座標幾何のひろがり」−「包絡線」に一般的な求め方があります. しかしそのためには,光線の方程式を, 何らかの媒介変数を用いて書きあらわさなければなりません.
南海 この曲線は数学的には包絡線というのだが,光学分野では焦線(caustic)あるいは火線という名で知られている.焦点では光が1点に集まるが,焦線とは点ではなくて線をなす場合をいうのである. ホイヘンス(Christiaan Huygens,1629年4月14日〜1695年7月8日)の教科書(1690年)にすでに書かれている.