next up previous
次: 円族の包絡線としてのサイクロイド 上: 光線の包絡線 前: 外サイクロイドと内サイクロイド

一般化の試み

耕一  反射光線の包絡線として, 円の周りをその円の半径の$\dfrac{1}{2}$ の円をまわしてできる外サイクロイドが得られました. そこで質問です. $\dfrac{b}{a}$を与えたとき, このサイクロイドを直線の包絡線として作ることができるのでしょうか.

南海  それを考えるためには,ここまで考えたことを一般化しなければならない.

  光線が半径1の円の内側で反射してできる光線の包絡線が半径$\dfrac{1}{2}$の円の周りを半径$\dfrac{1}{4}$がまわってできる外サイクロイドになるということだった.

   図のように半径1の円周上の点$\mathrm{P}$で反射した光線が, もういちど同じ円にあたる点を$\mathrm{Q}$としよう. そして, 必ずしも反射光線の軌跡ではない一般の円の弦$\mathrm{PQ}$の包絡線を考える.

    その設定の仕方を,反射光線の場合から考えよう. 角$\theta$は同様にとるとすると, $\overrightarrow{\mathrm{OQ}}$$x$軸の正の方向となす角はいくらになるか.

耕一  図から考えてそれは$\pi+3\theta$です.

そうか.点$\mathrm{P}$が角$\theta$の位置にあるとき,点$\mathrm{Q}$$\pi+3\theta$の位置にあるような関係を保って弦$\mathrm{PQ}$が動くとき,その包絡線が2円の半径の比が2:1であるような外サイクロイドになるのだ. このように考えると,光が右側から当たった場合も含めて,外サイクロイドが得られるのです.

    $10^{\circ}$ずつで$\mathrm{PQ}$を動かして書いてみました.

南海  このようにいちどは手を動かして書くことは大切だ.

耕一  ところで,一般化ですが,この3を$p$にするのですか.

南海  そうだ. 明らかに$p=0,\ 1,\ -1$のときは包絡線を作らないので, $p\ne 0,\ 1,\ -1$とする. 点$\mathrm{P}$が角$\theta$の位置にあるとき, 点$\mathrm{Q}$が角$\pi+p\theta$の位置にあるとして, 直線$\mathrm{PQ}$の包絡線を考えようということだ.

ただし点 $\mathrm{P},\ \mathrm{Q}$が一致するときは 直線$\mathrm{PQ}$の包絡線を考えるときには除外しておく. 除外した$\theta$の値以外のところで得られた包絡線が 除外した$\theta$の値以外のところでは連続しているなら, 除外した$\theta$の値に対応する点も連続性によって包絡線の 点として定義される.

耕一  $\mathrm{P},\ \mathrm{Q}$が一致するのは,

\begin{displaymath}
\theta=\pi +p\theta+2k\pi
\end{displaymath}

つまり

\begin{displaymath}
\theta=\dfrac{(2k+1)\pi}{p-1}
\end{displaymath}

のときです.包絡線を考えるときはこの$\theta$を除外するのですね.

南海  特異な点を除外して考え,後でその点を個別に考えるのがよい. そこでこの前提で,直線$\mathrm{PQ}$の方程式を求めよう.

耕一  $\mathrm{P}(\cos\theta,\ \sin\theta)$ $\mathrm{Q}(\cos(\pi+p\theta),\ \sin(\pi+p\theta))=
(-\cos(p\theta),\ -\sin(p\theta))$ですから直線$\mathrm{PQ}$ の方程式は,

\begin{displaymath}
(\sin\theta+\sin(p\theta))(x-\cos\theta)-
(\cos\theta+\cos(p\theta))(y-\sin\theta)=0
\end{displaymath}

これから

\begin{displaymath}
(\sin\theta+\sin(p\theta))x-
(\cos\theta+\cos(p\theta))y-\sin(p-1)\theta=0
\end{displaymath}

です.さらに変形すると,

\begin{displaymath}
2x\sin\dfrac{p+1}{2}\theta\cos\dfrac{p-1}{2}\theta-
2y\cos\d...
...1}{2}\theta
=2\sin\dfrac{p-1}{2}\theta\cos\dfrac{p-1}{2}\theta
\end{displaymath}

となります.ところが $\theta\ne \dfrac{(2k+1)\pi}{p-1}$つまり $\dfrac{p-1}{2}\theta\ne(2k+1)\cdot\dfrac{\pi}{2}$なので $\cos\dfrac{p-1}{2}\theta\ne 0$. したがって$\mathrm{PQ}$の方程式は

\begin{displaymath}
x\sin\dfrac{p+1}{2}\theta-
y\cos\dfrac{p+1}{2}\theta
=\sin\dfrac{p-1}{2}\theta
\end{displaymath}

となります.

次に包絡線と直線$\mathrm{PQ}$の接点を $\left(x(\theta),\ y(\theta) \right)$とします. この点は$\mathrm{PQ}$上にあるので

\begin{displaymath}
x(\theta)\sin\dfrac{p+1}{2}\theta-
y(\theta)\cos\dfrac{p+1}{2}\theta
=\sin\dfrac{p-1}{2}\theta
\quad \cdots\maru{5}
\end{displaymath}

です.これを$\theta$で微分します.

\begin{eqnarray*}
&&
x'(\theta)\sin\dfrac{p+1}{2}\theta
+x(\theta)\cdot\dfrac{p+...
...eta
=\dfrac{p-1}{2}\cos\dfrac{p-1}{2}\theta
\quad \cdots\maru{6}
\end{eqnarray*}

ところがベクトル $(x'(\theta),\ y'(\theta))$は包絡線の接線ベクトルですから, 法線方向 $\left(\sin\dfrac{p+1}{2}\theta,\ -\cos\dfrac{p+1}{2}\theta\right)$ とは直交します.つまり

\begin{displaymath}
x'(\theta)\sin\dfrac{p+1}{2}\theta
-y'(\theta)\cos\dfrac{p+1}{2}\theta=0
\end{displaymath}

したがって関係式$\maru{6}$

\begin{displaymath}
x(\theta)\cos\dfrac{p+1}{2}\theta\\
+y(\theta)\sin\dfrac{p+1}{2}\theta
=\dfrac{p-1}{p+1}\cos\dfrac{p-1}{2}\theta
\end{displaymath}

となります.これと$\maru{5}$を連立して $x(\theta),\ y(\theta)$について解き, $p=3$の場合と同様の整理と変形をおこなうと次式が得られました.

\begin{displaymath}
\left\{
\begin{array}{l}
x(\theta)=\dfrac{p}{p+1}\cos\thet...
...{p+1}\sin\theta-\dfrac{1}{p+1}\sin p\theta
\end{array}\right.
\end{displaymath}

南海  これで先の質問が解けるのではないか.

耕一  $\maru{4}$の表示と今得られた表示と見比べ

\begin{displaymath}
a+b=\dfrac{p}{p+1},\ b=\dfrac{1}{p+1},\ \dfrac{a+b}{b}=p
\end{displaymath}

と置きます.

\begin{displaymath}
a=\dfrac{p-1}{p+1},\ b=\dfrac{1}{p+1}
\end{displaymath}

ですから,

\begin{displaymath}
\dfrac{b}{a}=\dfrac{1}{p-1}
\end{displaymath}

つまり与えられた$\dfrac{b}{a}$に対して

\begin{displaymath}
p=\dfrac{a}{b}+1
\end{displaymath}

ととればよいのです.

南海  そういうことなのだ.

耕一  逆にまた,得られた包絡線がサイクロイドであることもわかります.


next up previous
次: 円族の包絡線としてのサイクロイド 上: 光線の包絡線 前: 外サイクロイドと内サイクロイド
Aozora Gakuen