next up previous
次: 凸多角形と凸関数 上: オイラーの公式 前: オイラーの公式へ

いくつかの話題

南海   ここまで来ればド・モアブルの定理とは,指数法則

\begin{displaymath}
e^{i(\theta_1+\theta_2)}=e^{i\theta_1}e^{i\theta_2}
\end{displaymath}

そのもであることがわかる.ド・モアブルの定理は三角関数の加法定理そのものだ.

ところで1999年の東大で次の問題が出題されている.

例 1.2.1       [99東大前期文理]

  1. 一般角 $\theta$ に対して $\sin \theta,\ \cos \theta$ の定義を述べよ.
  2. (1)で述べた定義にもとづき一般角 $\alpha,\ \beta$ に対して

    \begin{eqnarray*}
&&\sin(\alpha+\beta)=\sin \alpha\cos \beta+\cos \alpha\sin \b...
...&\cos(\alpha+\beta)=\cos \alpha\cos \beta-\sin \alpha\sin \beta
\end{eqnarray*}

    を証明せよ.

われわれの立場から別の解ができる.

史織  

$\cos \theta$$e^{i\theta}$ の実部とするのですね. すると $e^{i\theta}$ の共役は$e^{-i\theta}$ だから次の式を定義にできる.


  1. \begin{displaymath}
\cos \theta=\dfrac{e^{i\theta}+e^{-i\theta}}{2},\
\sin \theta=\dfrac{e^{i\theta}-e^{-i\theta}}{2i}
\end{displaymath}

  2. このとき

    \begin{displaymath}
e^{i\theta}=\cos \theta+i\sin \theta
\end{displaymath}

    である.

    \begin{displaymath}
e^{i(\alpha+\beta)}=e^{i\alpha}e^{i\beta}
\end{displaymath}

    より

    \begin{eqnarray*}
\cos(\alpha+\beta)+i\sin(\alpha+\beta)&=&
(\cos \alpha+i\sin...
...pha\sin \beta)
+i(\sin \alpha\cos \beta+\cos \alpha\sin \beta)
\end{eqnarray*}

    両辺の実部と虚部を比較して加法定理が得られる.

南海   もちろんこれは,$e^{i\theta}$の定義や指数法則の成立を示していないので 解答としては不完全だ.しかし,今話してきたことをすべて書けば一応解答にはなる.

三角関数の定義は一つではない.さらに別の観点から定義することもできる.

オイラーの公式を手にすると,二つの三角関数 $\sin \theta,\ \cos \theta$$e^{i\theta}$の実部と虚部として統一的につかめる.

例えば,もし

\begin{displaymath}
\dfrac{d}{d\theta}e^{i\theta}=ie^{i\theta}
\end{displaymath}

を認めるなら

\begin{eqnarray*}
&&\dfrac{d}{d\theta}(\cos \theta+i\sin \theta)
=\dfrac{d}{d\th...
...heta\\
&=&i(\cos \theta+i\sin \theta)=-\sin \theta+i\cos \theta
\end{eqnarray*}

より

\begin{displaymath}
\dfrac{d}{d\theta}\cos \theta=-\sin \theta,\
\dfrac{d}{d\theta}\sin \theta=\cos \theta
\end{displaymath}

となる.

いろいろ試してみてほしい.



Aozora Gakuen