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オイラーの公式へ

指数関数$e^x$

\begin{displaymath}
e^x=\sum_{n=0}^{\infty}\dfrac{1}{n!}x^n
\end{displaymath}

と展開された.また自然対数の底 $e$

\begin{displaymath}
e=\sum_{n=0}^{\infty}\dfrac{1}{n!}
\end{displaymath}

となる.

史織   $e^x$ については指数法則も証明しなければならない?

南海   いいことに気づいた.やってみてほしい.

史織   (しばらく考える.すこし南海先生に教えてもらう.)

\begin{eqnarray*}
e^x\cdot e^y
&=&\left(\sum_{n=0}^{\infty}\dfrac{1}{n!}x^n\righ...
...n} \right)\\
&=&\sum_{j=0}^{\infty}\dfrac{1}{j!}(x+y)^j=e^{x+y}
\end{eqnarray*}

南海   というわけだ.

史織   指数法則の証明に二項定理が出てくるのですね.

南海   このような事実を味わうことが大切だ.

そこで複素数 $z$ に対しても

\begin{displaymath}
e^z=\sum_{n=0}^{\infty}\dfrac{1}{n!}z^n
\end{displaymath}

と定めてしまえ,ということだ. $z=x+iy$ とすると指数法則は示したばかりなので

\begin{displaymath}
e^z=e^{x+iy}=e^x\cdot e^{iy}
\end{displaymath}

になる.そこで

\begin{eqnarray*}
e^{iy}&=&1+(iy)+\dfrac{1}{2}(iy)^2+\dfrac{1}{3!}(iy)^3+\dfrac{...
...frac{1}{4!}y^4+\cdots+i \left(y -\dfrac{1}{3!}y^3+\cdots \right)
\end{eqnarray*}

史織   あっ.この実部と虚部は先に求めた $\cos y$$\sin y$ の展開です.だから

\begin{displaymath}
e^{iy}=\cos y+i\sin y
\end{displaymath}

になる!

南海   もちろんここでは加える順序を変えてもいいのか,という問題がある. この場合はいいのだがその論証はここではしない.かくして

定理 4
    

\begin{displaymath}
e^{x+iy}=e^x(\cos y+i\sin y)
\end{displaymath}

となり,オイラーの公式が示せた.

$e^{x+iy}$を級数展開を用いて定義したが, $e$ のもう一つの定義にならい

\begin{displaymath}
e^{x+iy}=\lim_{n \to \infty} \left(1+\dfrac{x+iy}{n} \right)^n
\end{displaymath}

として定め,論を進める方法もある.

いずれにしてもオイラーの公式は数学的に実在する現象である.

ところで$x+iy=i\pi$ にすると

\begin{displaymath}
e^{i\pi}=-1
\end{displaymath}

となる.

これは,円周率 $\pi$ ,自然対数の底 $e$ ,そして虚数単位 $i$ , さらに数 1 を結びつける式だ. それぞれ,歴史的にはまったく別のところで発見され用いられてきた.それがこのように 一つの式に結びつくのだ.不思議というか,うまくできているというか,造化の妙というか. 感心するしかない.



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