そこで今日は,円周率を実際に式に表し値を求めるさまざまな方法を, 高校数学として可能な範囲で考えよう.
拓生
まず円周率 の定義です.
その値は
南海 そう.
日常の目的にはやを用いれば十分で,もう少し精度の高い数値が必要な技術系では や などを使用することが多い. 天気予報や人工衛星などの計算では30桁程度の値を使用している.も覚えやすく精度が高い分数である.
ドイツの数学者ルドルフ・ファン・コイレンは1600年代に35桁目まで の正しい値を計算した. 彼の墓標にはこの値が刻まれている.ドイツでは彼の名にちなんで円周率をルドルフ数と呼ぶそうだ. スロベニアの数学者ユリー・ベガは1789年に140桁まで正しい値を求め,37桁目までが正しかった. この記録はその後50年破られることがなかった.
円周率は人間が世界から見いだした定数で,やはり人間の歴史とともにある.
円周率を算出することは、アルキメデスが円に接する正多角形の周長を 求めることにより始まった. まずアルキメデスの方法を整理しよう.
円周率の定義から,半径の円の円周がちょうどになる. そこで半径の円に内接する正角形の周の長さを, 外接する正角形の周の長さをとおこう.
拓生 まずこれを求めてみます. 正角形の隣りあう2つの頂点と円の中心がなす角のをとおく. になる.
したがって 内接正角形の1辺は . 外接正角形の1辺は になる.
南海
だから,ここでさらに正多角形の各辺を2分割して正角形にするとそれぞれ周の長さは
ここでもしをで表すことができれば,最初は正三角形や正四角形から はじめて,次々に正六角形や正八角形,正十二角形や正十六角形, としたときの内接正多角形と 外接正多角形の周の長さを,その関係式から求めていくことができる.
拓生 とりあえずの和と積を作ってみます.簡単のために とおきます.
だから
がわかりません.
南海 ここは次のようにすればよい.
拓生
つまり
南海
とすると,最初に任意の正角形を作り,そこから順に倍々に増やしていって,となったときを
考える.
これで計算してを求めていけば,その逆数が内接,外接正多角形の周長だ. これは,円周に収束する.これで任意の精度で円周率が求まる.
アルキメデスは正六角形から始めたらしい.
拓生 半径の円に内接する正六角形の周は .また外接正六角形は 一辺が なので .
これからとを求め,漸化式によってとから順に求めていく.その逆数が 外からと内からの円周の近似,つまりは円周率の近似です.
この場合
電卓を用いていくつか計算してみました.
南海 ということは正12角形の場合だ.
次にで正方形から始めてみよう.
拓生 この場合