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入試問題の一般化

エジプト分数とは,有理数をいくつかの異なる単位分数(分子が 1 の分数)の和に表したものをいい,またその方式をいう.2006年の富山大学の入学試験に,1より小さい2個または3個からなるエジプト分数に関して,その最大値を求める次のような問題が出された.

     次の問いに答よ.

  1. $a,\ b$$a<b$ $\dfrac{1}{a}+\dfrac{1}{b}<1$を満たす任意の自然数とするとき, $\dfrac{1}{a}+\dfrac{1}{b}$の最大値が$\dfrac{5}{6}$であることを証明せよ.
  2. $a,\ b,\ c$$a<b<c$ $\dfrac{1}{a}+\dfrac{1}{b}+\dfrac{1}{c}<1$を満たす任意の自然数とするとき, $\dfrac{1}{a}+\dfrac{1}{b}+\dfrac{1}{c}$の最大値が $\dfrac{41}{42}$であることを証明せよ.

本問の最大値を与える$a,\ b,\ c$$a=1+1=2$ $a=1+1=2$ $a=1+1=2$で得られるものであり,これはよく知られたシルベスター数列の第1,第2,第3項である.この入試問題は,1をエジプト分数で下から近似するとき,最良の近似がシルベスター数列から得られると,一般化される.

本稿では,さらにそれを一般化して,単位分数をエジプト分数で下から近似するとき,その最良の近似は,拡張された$N$シルベスター数列から得られる,という定理を証明する.そこで用いられる補題は1変数の場合のムーアヘッドの不等式である.



Aozora
2013-09-03