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特殊な函数を使うもの

まず97年に鹿児島大学で出題されたものを紹介しよう. 雜誌『初等数学』(2001年3月号)の宮地俊彦先生によるともともと宮地先生が どこかで話されたものが鹿児島大の先生の耳に入り入試問題になったそうだ. ちなみにできは非常に悪かったそうである.

方法 3
    [79鹿児島大]
  1. $a$ を与えられた正の定数とするとき, $f(x)=\dfrac{a-x}{x}+\log x$ の最小値を求めよ. ただし, $\log x$$x$ の自然対数を表すものとする.
  2. $n$ 個の関数 $f_1(x),\ f_2(x),\ \cdots,\ f_n(x)$ と それらの和 $\displaystyle \sum_{k=1}^nf_k(x)$ がいずれも最小値をもつとき,それらの最小値を,それぞれ, $m_1,\ m_2,\ \cdots,\ m_n,\ M$ とすると,

    \begin{displaymath}
m_1+m_2+\cdots+m_n\le M
\end{displaymath}

    となることを示せ.
  3. 上の結果を利用して

    \begin{displaymath}
G_n\le A_n
\end{displaymath}

    を示せ.また,この不等式で等号が成立する場合を吟味せよ.

  1. \begin{eqnarray*}
f'(x)&=&-\dfrac{a}{x^2}+\dfrac{1}{x}\\
&=&\dfrac{-a+x}{x^2}
\end{eqnarray*}

    従って $x=a$ のとき最小値 $f(a)=\log a$
  2. $m_k \le f_k(x)\ (k=1,\ 2,\ \cdots,\ n)$ より

    \begin{displaymath}
\sum_{k=1}^nm_k\le \sum_{k=1}^nf_k(x)
\end{displaymath}

    が任意の $x$ で成立する.

    一方,和 $\displaystyle \sum_{k=1}^nf_k(x)$$x=x_0$ で最小値$M$ をとるとすると,

    \begin{displaymath}
\sum_{k=1}^nm_k\le \sum_{k=1}^nf_k(x_0)=M
\end{displaymath}

    つまり

    \begin{displaymath}
m_1+m_2+\cdots+m_n\le M
\end{displaymath}

    が示された.
  3. $f_k(x)=\dfrac{a_k-x}{x}+\log x$とおく. これは $x=a_k$ でのみ最小値 $\log a_k$をとる.

    一方

    \begin{displaymath}
\sum_{k=1}^nf_k(x)=
\dfrac{\displaystyle \sum_{k=1}^na_k -...
...ac{1}{n}
\displaystyle \sum_{k=1}^na_k -x}{x}+\log x\right\}
\end{displaymath}

    の最小値は $\displaystyle n\log \left(\dfrac{1}{n}\sum_{k=1}^na_k \right)$ である.したがって(1)から

    \begin{displaymath}
\sum_{k=1}^n\log a_k \le n\log
\left(\dfrac{1}{n} \sum_{k=1}^na_k \right)
\end{displaymath}

    つまり

    \begin{displaymath}
G_n\le A_n
\end{displaymath}

    である.また,この不等式で等号が成立するのは 各 $f_k(x)$ が同じ $x$ で最小になりうるときのみであるから, $a_1=a_2=\cdots=a_n$ のときである.□

また別のものが 00年滋賀県立大で出題された. 昔から知られている方法である.

方法 4
    [00滋賀県立大]
  1. $a,\ b$ が正の実数で $n$ が2以上の自然数のとき,不等式

    \begin{displaymath}
\left(\dfrac{a+b}{n} \right)^n
\ge a \left(\dfrac{b}{n-1} \right)^{n-1}
\end{displaymath}

    が成り立つことを示せ.

  2. \begin{displaymath}
G_n\le A_n
\end{displaymath}

    であり, 等号が成り立つのは $a_1=a_2=\cdots=a_n$のときに限ることを示せ.


  1. \begin{displaymath}
f(x)= \left(\dfrac{x+b}{n} \right)^n-x
\left(\dfrac{b}{n-1} \right)^{n-1}
\ (x>0)
\end{displaymath}

    とおく.

    \begin{eqnarray*}
f'(x)&=&n\left(\dfrac{x+b}{n} \right)^{n-1}\cdot\dfrac{1}{n}
...
...frac{x+b}{n} \right)^{n-1}
-\left(\dfrac{b}{n-1} \right)^{n-1}
\end{eqnarray*}

    $x>0$ のとき

    \begin{displaymath}
f'(x)>0\ \iff\ \dfrac{x+b}{n}>\dfrac{b}{n-1}
\ \iff\ x>\dfrac{b}{n-1}
\end{displaymath}

    したがって $f(x)$ $x=\dfrac{b}{n-1}$ で極小かつ最小である. つまり

    \begin{displaymath}
f(x)\ge f\left(\dfrac{b}{n-1} \right)
\end{displaymath}

    ここで

    \begin{eqnarray*}
f\left(\dfrac{b}{n-1} \right)
&=&\left(\dfrac{\dfrac{b}{n-1}...
...eft(\dfrac{b}{n-1} \right)^n
-\left(\dfrac{b}{n-1} \right)^n=0
\end{eqnarray*}

    したがって $f(x)\ge 0$$x>0$ に対してつねに成り立つ.

    $x=a$ のときより$a,\ b$ が正の実数で $n$ が2以上の自然数のとき,不等式

    \begin{displaymath}
\left(\dfrac{a+b}{n} \right)^n
\ge a \left(\dfrac{b}{n-1} \right)^{n-1}
\end{displaymath}

    が成り立つことが示された.
  2. 数学的帰納法で示す.

    $n=2$ のとき(1)の結論から

    \begin{displaymath}
\left(\dfrac{a+b}{2} \right)^2\ge ab
\quad \iff \quad \dfrac{a+b}{2}\ge\sqrt{ab}
\end{displaymath}

    である.

    $n=k$ で成立するとする. $a=a_{k+1}$ $b=a_1+a_2+\cdots+a_k$$n=k+1$ で(1)の結論を用いると

    \begin{eqnarray*}
\left(\dfrac{a_1+a_2+\cdots+a_k+a_{k+1}}{k+1} \right)^{k+1}
...
...cdots+a_k}{k} \right)^k\\
&\ge&a_{k+1} \cdot a_1a_2\cdots a_k
\end{eqnarray*}

    等号が成立するのは $a=b$ かつ $a_1=\cdots=a_k$ . つまり $a_1=\cdots=a_k=a_{k+1}$ のとき.

    したがって $n\ge 2$ の自然数について

    \begin{displaymath}
G_n\le A_n
\end{displaymath}

    であり,等号が成り立つのは $a_1=a_2=\cdots=a_n$のときに 限ることが示された.□

これと同じ問題が,形を変えて出題されている.これは例題として掲げておく.

方法4で,bをAに,aをxに,nをn+1にすれば同じである.

例題 [05徳島大]

多項式関数を用いる方法としては,次のものが標準的である.

方法 5
  1. $x>0$ のとき,関数

    \begin{displaymath}
f(x)=\dfrac{a_1+a_2+\cdots+a_{n-1}+x}{n}
-\sqrt[n]{a_1a_2\cdots a_{n-1}x}
\end{displaymath}

    の最小値を求めよ.
  2. (1)の結果を用いて,数学的帰納法により

    \begin{displaymath}
G_n\le A_n
\end{displaymath}

    となることを証明せよ.

  1. 関数を

    \begin{displaymath}
f_n(x)=\dfrac{a_1+a_2+\cdots+a_{n-1}+x}{n}
-\sqrt[n]{a_1a_2\cdots a_{n-1}x}
\end{displaymath}

    とし, $A=a_1a_2\cdots a_{n-1}$ とおく. $x>0$ のとき,

    \begin{eqnarray*}
{f_n}'(x)
&=&\dfrac{1}{n}-\sqrt[n]{A}\cdot
\dfrac{1}{n}x^{ ...
...{n}-1}\\
&=&\dfrac{1}{n}(1-A^{ \frac{1}{n}}x^{\frac{1-n}{n}})
\end{eqnarray*}

    したがって $x=A^{\frac{1}{n-1}}$ のとき $f_n(x)$ は極小かつ最小になる. 最小値は

    \begin{eqnarray*}
&&f_n(A^{\frac{1}{n-1}})\\
&=&\dfrac{a_1+a_2+\cdots+a_{n-1}...
...cdots+a_{n-1}
+(1-n)(a_1a_2\cdots a_{n-1})^{\frac{1}{n-1}}}{n}
\end{eqnarray*}

  2. $n=2$ のとき.

    \begin{displaymath}
f_2(x)=\dfrac{a_1+x}{2}-\sqrt{a_1x}
\end{displaymath}

    で,この$f_2(x)$ の最小値は

    \begin{displaymath}
\dfrac{a_1+(1-2)a_1}{2}=0
\end{displaymath}

    $x=a_2$ で用いて $f_2(a_2)=\dfrac{a_1+a_2}{2}
-\sqrt{a_1a_2}\ge 0$. つまり

    \begin{displaymath}
A_2\ge G_2
\end{displaymath}

    $n$ のとき成立するとし, $n+1$ での成立を示す.

    (1)の最小値を $n+1$ で用いて

    \begin{eqnarray*}
f_{n+1}(x)
&\ge&\dfrac{a_1+a_2+\cdots
+a_n-n(a_1a_2\cdots a_n)^{\frac{1}{n}}}{n+1}\\
&=&\dfrac{nA_n-nG_n}{n+1}
\end{eqnarray*}

    ゆえに,帰納法の仮定から $f_{n+1}(x)\ge0$である. $x=a_{n+1}$ で用いて

    \begin{displaymath}
f_{n+1}(a_{n+1})
=\dfrac{a_1+a_2+\cdots+a_n+a_{n+1}}{n+1}
-\sqrt[n+1]{a_1a_2\cdots a_na_{n+1}}
\ge 0
\end{displaymath}

    つまり

    \begin{displaymath}
G_{n+1}\le A_{n+1}
\end{displaymath}

    ゆえに一般に

    \begin{displaymath}
G_n\le A_n
\end{displaymath}

    が示された.□

次のものは凸関数を用いる証明[2]と本質的には同じなのだが, 相加平均,相乗平均の大小関係の証明に特化することでより簡単にできる. 二つの方法をまとめてある.雜誌『初等数学』(1999年8月号)の宮地俊彦先生の報告による.

方法 6
  1. $x>-1$に対し

    \begin{displaymath}
x \ge \log (1+x)\ (\ 等号成立は x=0 のときのみ\ )
\end{displaymath}

    を示せ.
  2. (1)で $x_k= \dfrac{a_k}{G_n}-1$ とおけ.得られた不等式を すべて加えることで

    \begin{displaymath}
G_n\le A_n
\end{displaymath}

    を示し,等号成立が $a_1=a_2=\cdots=a_n$のときに限ることを示せ.
  3. (1)で $x_k= \dfrac{a_k}{A_n}-1$ とおけ.得られた不等式を すべて加えることで

    \begin{displaymath}
G_n\le A_n
\end{displaymath}

    を示し,等号成立が $a_1=a_2=\cdots=a_n$のときに限ることを示せ.

  1. $x>-1$に対し

    \begin{displaymath}
f(x)=x-\log (1+x)
\end{displaymath}

    とおく.

    \begin{displaymath}
f'(x)=1-\dfrac{1}{1+x}=\dfrac{x}{1+x}
\end{displaymath}

    したがって $f(x)$$x=0$ で極小かつ最小である. $f(0)=0$ なので $f(x)\ge 0$ で,等号成立は $x=0$ のときのみ であることが示された.
  2. $x_k= \dfrac{a_k}{G_n}-1>-1$である. (1)から

    \begin{displaymath}
\dfrac{a_k}{G_n}-1\ge \log \left(\dfrac{a_k}{G_n} \right)
\end{displaymath}

    ゆえに

    \begin{eqnarray*}
&&\sum_{k=1}^n \left(\dfrac{a_k}{G_n}-1 \right)
\ge \sum_{k=...
...log \dfrac{a_1a_2\cdots a_n}{{G_n}^n}
=n\log\dfrac{G_n}{G_n}=0
\end{eqnarray*}


    \begin{displaymath}
∴ \quad G_n\le A_n
\end{displaymath}

    等号成立は

    \begin{displaymath}
x_k= \dfrac{a_k}{G_n}-1=0\ (k=1,\ 2,\ \cdots,\ n)
\end{displaymath}

    つまり $a_k=G_n\ (k=1,\ 2,\ \cdots,\ n)$ のときに限る. これは $a_1=a_2=\cdots=a_n$のときに限ることを意味している.
  3. 同様に $x_k= \dfrac{a_k}{A_n}-1>-1$ なので(1)が使える.

    \begin{displaymath}
\dfrac{a_k}{A_n}-1\ge \log \left(\dfrac{a_k}{A_n} \right)
\end{displaymath}

    ゆえに

    \begin{eqnarray*}
&&\sum_{k=1}^n \left(\dfrac{a_k}{A_n}-1 \right)
\ge \sum_{k=...
...-n
\ge \log \dfrac{a_1a_2\cdots a_n}{A_n}=\log\dfrac{G_n}{A_n}
\end{eqnarray*}


    \begin{displaymath}
∴ \quad 0 \ge \log\dfrac{G_n}{A_n} \quad より \quad G_n\le A_n
\end{displaymath}

    等号成立は

    \begin{displaymath}
x_k= \dfrac{a_k}{A_n}-1=0\ (k=1,\ 2,\ \cdots,\ n)
\end{displaymath}

    つまり $a_k=A_n\ (k=1,\ 2,\ \cdots,\ n)$ のときに限る. これは $a_1=a_2=\cdots=a_n$のときに限ることを意味している. □


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