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別解を考える大切さ

問題を解いていると,解き方が一つではないことがある.問題集などにも「解1」,「解2」などといくつかあがっていることがある.そこで「一番良い解き方」というのがあるのだろうかという疑問が起こる.そもそも別解を考えるのは大切なのか時間の無駄なのかということもいちどは考えたい.

数学的には「一番良い解き方」というものはない.いろんな解き方はたがいに関係している.一つの数学的現象のいろいろな側面ということもあれば,現象のとらえ方が違うということもある.その結果生じたさまざまの解法の相互関係こそ重要な考えるべきことである.

試験問題を解くという意味では,もっとも簡潔な解答というのはありうる.問題によって,ベクトルか座標でやるか幾何の論証で示すか,などである.では,それを見ぬく力はどのように養われるか.それは,日頃いろんな解法を試みることで養われる.このような置き方では計算が大変になるということなどは,経験して身につけなければならない.

日頃からいろいろと別解を研究していると,問題を多面的に見ることができ,そのなかでいずれかの切り口から解法の糸口がつかめる.異なる問題を二つ解くより,同じ問題を二通りに解く方が力がつく.いろんな視点から解法を探し,糸口を見つける.日頃からつねにいろんな切り口で考えるようにしたい.

しかし,漫然といろんな解き方を考えるというのでは本当の力はつかない.問題に対して,考えられる解法の方向性はそんなに多くない.一つの問題に対して次のようなことを追求しよう.

  1. 与えられた条件をよく考え, まず,かならずこうやればできるはずだという方法を追求する. まずは少々下手でもかならずできる普遍的な方法だ. それを考える.
  2. そして一般的に解くことを試みる. まず問題を一般化してみる. 変数の個数を $n$ にする等だ. あるいは条件の一部をはずしてみる. 一般化しても成立しそうだと見当をつけたら 可能なかぎり一般的な場合にも通用する方法を考える.
  3. そのうえで別解を試みる. よりよい道具はないか. 発想を変えた別の方法はないか. 問題のとらえ方を転換できないかなどを考える. それ自体が問題をより深くとらえることである.

別解を考えることは数学を考えることそのものだ.いろんな解法とその相互関係がつかめて,はじめてその問題が判ったといえる.複数の解法を比較し研究する.これが数学力をつける最良の方法である.別解を考えるおもしろさに気づき,日頃から一つの解法に満足せず,他の解法を考えるようにすれば,数学の力が飛躍する.

なお構成は次のようにした.まず問題を提示し,方針でいくつかの解法の方向を示し,それに対応したを順次述べ,必要に応じて,吟味でそれらを比較検討するということにした.一応分野別にまとめたがこれはあまり本質的ではない.なぜかというと,別解を考えること自体,分野をこえることになるからだ.授業のなかでいろんな別解に出会った.私の準備した解答とは異なる方向で解答してくれた多くの高校生に感謝する.今後とも,実際に高校生が考えた別解をできるかぎり紹介していきたい.



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