サイコロの目の出方は通りあり,そのうち和が3の倍数になるのは….と論述を進める人が多い.しかし通りあるということも一つの結論である.この根拠は何か.やはり次のように進めるべきだ.
三つのサイコロを区別する.それぞれのサイコロの目の出方は6通りあり,各サイコロの目の出方は独立なので,サイコロの目の出方は通りある.そのうち和が3の倍数になるのは….
あるいは小問に分かれている確率などの問題で(1)ですべての場合の総数を問われて,何も理由を書かずに「通り」とだけ書いて済ます人もたいへん多い.小問のはじめの方の問いこそていねいに根拠を書くべきなのだ.そうすると問題の全体がつかめる.サイコロを区別して数えるということをおさえることが,その後の計算を確実にするために必要なのだ.
これはの条件を求めよということなのだが,見落としやすいところがある.条件といえばそれは必要十分条件なのだ.
解答
これは なら成立する. よって は十分条件である.
必要条件でもあることを示す.
をで割って整理する.
に応じて
このような論理に関する感覚的な鋭さを養いたい.以上で問題とは何かを考えた.
入試問題など高校数学の問題は,作り出された問題であり,結果はあらかじめ出題者にはわかっている.したがって高校数学の問題は必ず解ける.高校数学の問題は,一つは理解を助けるためにあり,一つは問題を分析して系統立てて解く力を訓練するためにある.そこで求められる力は,この先いろんな分野で能動的に生きていくために必要なものに他ならない.ならばいくつかの基本的な方法を定式化し,それを身につけていくことは,単に数学ができるようになる以上の意味をもつことになる.そのためにいくつかの方法をできるだけ系統的に考えていこう.
数学の問題を解こうとするとき,どこから手をつけていいか見当もつかなかったり,あるいは逆にやみくもに試行錯誤したり,いずれにしても系統立てて問題に取り組むということがなかなかできない.数学の問題というのはそれ自身構造をもっている.まず問題の構造を見抜くことである.それによって問題を解く道筋も定まってくる.もちろん一般に一つということはないのだが,問題の構造が正確に見えれば,半ば解けたといってよい.構造を見抜き解法の道筋を発見する補助手段として,いくつかの方法がある.
新しい問題に出会ったとき,ここで勉強した方法を意識的に適用してみてほしい.それができればずいぶん力が伸びたことを実感できるだろう.その方法を次のように分類して順次その内容を考えるとともに,近年の入試問題を演習問題として考え方とともに紹介する.
これらについて,解説と例題,演習問題とその解答で進めたい.
この『高校数学の方法』では考え方を学ぶので,整式関数以外の微分積分は扱わない.
また,教科書と学校で入手した問題集を一通りやった段階を仮定している.
それぞれの解答は,その項目の方法の実践であるが,
またまったく別の方法があるときもある.
他の方法があるときはできるかぎり別解も紹介する.
異なる問題を二題解くよりも一題を二通りの方法で解く方が力がつく.
日頃からつねに別解を考えるようにしてほしい.