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存在するものを文字に置く

「何々が存在するとき」のように存在が条件である設定は多い. このように存在するといわれれば存在するものを文字におく. そして,得られる等式からいくつかのことを引き出す. このように文字に置くことから引き出されるのは, 「何々が存在する」ための必要条件である. そのうえで実際に存在するための十分条件を検証する.


例題 2.3  

$a,\ b$が実数のとき次の二つの2次方程式

\begin{displaymath}
x^2+ax+b=0,\ \quad ax^2+bx+1=0
\end{displaymath}

が共通解をもつための条件とそのときの共通解を求めよ.


考え方     共通解があるとして,それを文字に置く. ここから得られる結果は必要条件だ. 必要条件として何を引き出すかは, いろいろ工夫のしどころである. そのうえで,得られた結果の十分性を確認していく.

解答1     共通解が存在するとし,それを$\alpha$とおく.

    $\displaystyle \alpha^2+a\alpha+b=0$ (2.4)
    $\displaystyle a\alpha^2+b\alpha+1=0$ (2.5)

(2.4)$\times a-$(2.5)より

\begin{displaymath}
(a^2-b)\alpha+ab-1=0
\end{displaymath}

$a^2-b=0$のとき.$ab-1=0$も成り立ち$b$を消去すると $a^3=1$$a$が実数なので$a=1$$b=1$. このとき両式は一致し, 共通解は $x=\dfrac{-1\pm\sqrt{3}i}{2}$

$a^2-b\ne 0$のとき. $\alpha=\dfrac{1-ab}{a^2-b}$が必要である. これから

\begin{displaymath}
\left(\dfrac{1-ab}{a^2-b}\right)^2
+a\left(\dfrac{1-ab}{a^2-b}\right)+b=0
\end{displaymath}

この分母を払い整理すると,

\begin{displaymath}
a^3+b^3+1-3ab=(a+b+1)(a^2+b^2+1-a-b-ab)=0
\end{displaymath}

$a^2+b^2+1-a-b-ab=\dfrac{(a-b)^2+(b-1)^2+(1-a)^2}{2}$より, 係数は実数なのでこれが0になるのは$a=b=1$のときだが, $a^2-b\ne 0$に反する. よって$a+b+1=0$.明らかに$x=1$が共通解.

求める条件と共通解は


である. □


解答2     同様に設定する. (2.4)$-$(2.5)より

\begin{eqnarray*}
&&a\alpha(\alpha-1)+b(\alpha-1)-(\alpha+1)(\alpha-1)\\
&=&(\alpha-1)(a\alpha-\alpha+b-1)=0
\end{eqnarray*}

$\alpha=1$のとき.条件は$a+b+1=0$

$a\alpha-\alpha+b-1=0$のとき.

$a=1$なら$b=1$で, このとき両式は一致し,共通解は $x=\dfrac{-1\pm\sqrt{3}i}{2}$

$a\ne 1$なら $\alpha=\dfrac{1-b}{a-1}$が必要.

\begin{displaymath}
\left(\dfrac{1-b}{a-1}\right)^2
+a\left(\dfrac{1-b}{a-1}\right)+b=0
\end{displaymath}

分母を払い整理すると

\begin{displaymath}
a^2+b^2+1-a-b-ab=0
\end{displaymath}

解法1と同様に$a=b=1$となり,$a\ne 1$に反する.

よって同様の解を得る. □


解答3     (2.4) $\times \alpha-$(2.5)とする.

\begin{displaymath}
\alpha^3-1=(\alpha-1)(\alpha^2+\alpha+1)=0
\end{displaymath}

$\alpha=1$のとき.条件は$a+b+1=0$

$\alpha^2+\alpha+1=0$のとき. $\alpha=\dfrac{-1+\sqrt{3}i}{2}$または $\overline{\alpha}=\dfrac{-1-\sqrt{3}i}{2}$. 係数が実数なので一方が共通解なら他方も共通解である.

第1の方程式で解と係数の関係から

\begin{displaymath}
-a=\alpha+\overline{\alpha},\
b=\alpha\cdot\overline{\alpha}
\end{displaymath}

$\alpha+\overline{\alpha}=-1$ $\alpha\cdot\overline{\alpha}=1$より条件は $a=b=1$

よって同様の解を得る. □


このように「何をどう置くか」と考え式を立てることが, 問題解決の第一歩である. 式を立てようとすることで問題を解きほぐす糸口が見つかることが多い. したがって,今後いろんな所で目的意識をもってこれを試してほしい.


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