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二階線形微分方程式の解の存在と解の構造についてまとめよう.
まず,二階線形微分方程式の解の存在を示そう.
方針は一階正規形の場合と同様に,
微分方程式と初期条件を一つの積分方程式に還元し,
が縮小写像であるようにとれることを示し,解の存在を示す.
初期条件が複雑な分だけの構成が複雑である.
定理 85
を実数
で定義された連続な関数とする.
二階線形微分方程式
|
(8) |
の解で,初期条件
を満たす,つまり
となるものが一意に存在する.
■
証明
とおく.についての初期条件はないので,
これをもとに初期条件を満たすを構成する.
これらが微分方程式を満たすようにが決定できればよい.
積分変数をそろえて微分方程式に代入する.
そこで
とおくと
|
(9) |
となる.これを満たすが一意に存在することを示せばよい.
任意の正数をとり,区間上の連続関数空間をとする.
からへの写像を
で定める.
は連続であるから,
のとき
としてよい.
をとる.
を
に変えてもよい.
自然数に対して
|
(10) |
と仮定すると,
より,数学的帰納法によって仮定10が一般に成り立つ.
であるから
ところが
なので,
を大きくとることにより
にとることができる.
このについてはの縮小写像であり,
定理72によってはただ一つの不動点
をもつ.
このとき
となり,もの不動点である.の不動点は一意であるから,
であり.つまりはの不動点である.の不動点はの不動点でもあるから,
一意である.よってはただ一つの不動点をもつことが示された.
いいかえると任意の正数に対して,
積分方程式9の解
I=[-a, a]
が一意に存在することが示された.
これは微分方程式8に対して,
で定義されで微分可能な解が存在することを意味している.
□
実数の完備性にはじまり微分方程式の解の存在に至る道を,
とにかく歩き通すことができた.
二階線形微分方程式の解の集合は空ではない.解の集合の構造を考えよう.
特にであるものを同次方程式という.
これに関して次の定理が成り立つ.
証明
(1)
より,も解である.
(2)
任意の解をとる.
行列
は,
より逆行列をもつ.
そこで
とおく.つまり
より
となる.第一式を微分して
となる.
第二式と比較して
となる.
第二式を微分して
となる.
ここで
したがって
となる.つまり
である.
より
を得る.つまりとは定数である.よってこれをとおくと
と表された.
□
実数で定義され二階微分可能な実数値関数の集合をとおく.
は実数上のベクトル空間である.
からへの写像を
で定める.定理の証明と同様にはの線型写像である.
定理86はがの基底となるための条件を示している.
微分方程式
の解とは,の原像
に他ならない.従って一つの解が求まれば,他の解はすべて
で得られる.
常微分方程式の実用的な解法については,多くの参考書がある.
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2014-05-23