(1)
$ n $ 次多項式 $ f(x) $ に対し,
$ \displaystyle f(x)=\sum_{i=0}^nc_ig_i(x)
\quad \cdots@ $
となる実数 $ c_i (0\leqq i\leqq n, 但し c_n\ne 0) $ が一意的に存在することを, $ n $ に関する帰納法で示す.
$ n=0 $ のとき. $ g_0(x)=1 $ なので $ f(x)=a_0=a_0g_0(x) $ となる.
よって, $ c_0=a_0 $ と一意に定まる.
$ n-1 $ 以下のとき成立しているとする.
$ @ $ において, $ x^n $ の係数を比較することにより,
$ c_n=n!a_n $ が必要である.このとき,
\[
c_ng_n(x)=n!a_n\cdot \dfrac{x(x-1)\cdots (x-n+1)}{n!}
=a_nx^n+[n-1次以下の項]
\]
となるので, $ f(x)-c_ng_n(x) $ は $ n-1 $ 次以下の整式である.
従って,
\[
f(x)-c_ng_n(x)=\sum_{i=0}^{n-1}c_ig_i(x)
\]
となる実数 $ c_i\ (0\leqq i\leqq n-1, 但し c_{n-1}\ne 0) $ が一意に存在する.
この結果,等式 $ \displaystyle f(x)=\sum_{i=0}^nc_ig_i(x) $
が恒等式となる実数 $ c_i (0\leqq i\leqq n, 但し c_n\ne 0) $ が一意的に存在する.
(2) $ g_0(x)-g_0(x-1)=0 $ , $ g_1(x)-g_1(x-1)=x-(x-1)=1=g_0(x) $ であり, $ i\geqq 2 $ のとき, \begin{eqnarray*} g_i(x)-g_i(x-1) &=&\dfrac{x(x-1)\cdots (x-l+1)}{i!}-\dfrac{(x-1)(x-2)\cdots (x-l)}{i!}\\ &=&\dfrac{\{x-(x-i)\}(x-1)\cdots (x-i+1)}{i!}\\ &=&\dfrac{(x-1)\cdots \{x-1-(i-1)+1\}}{(i-1)!}=g_{i-1}(x-1) \end{eqnarray*} である.よって, $ n>0 $ のとき等式 $ \displaystyle f(x)-f(x-1)=\sum_{i=1}^nc_ig_{i-1}(x) $ が成り立つ.
(3)
$ g_i(x) $ はその定義から,
\[
g_i(0)=g_i(-1)=\cdots=g_i(-i+1)=0
\]
で $ k\geqq i $ のとき,
\[
g_i(-k)=(-1)^i\dfrac{k(k-1)\cdots(k-i+1)}{i!}=(-1)^i{}_k\mathrm{C}_i
\]
であり,整数値をとる.
(1)から $ n $ 次の整式 $ F(x) $ に対して,
\[
F(x)=\sum_{i=0}^nd_ig_i(x)
\]
が恒等式となるとなるような実数 $ d_i (0\leqq i\leqq n, 但し d_n\ne 0) $ が一意的に存在する.
任意の整数 $ a $ に対して $ F(a) $ が整数であるとき,
$ d_i\ (0\leqq i\leqq n, 但し d_n\ne 0) $ が整数である.
これを, $ i $ に関する数学的帰納法で示す.
$ \displaystyle F(0)=\sum_{i=0}^nd_ig_i(0)=d_0 $ より $ d_0 $ は整数である.
$ d_i (0\leqq i\leqq k-1) $ が整数とする.
\begin{eqnarray*}
F(-k)&=&\sum_{i=0}^nd_ig_i(-k)=d_0+d_1g_1(-k)+\cdots+d_kg_k(-k)\\
&=&d_0+d_1g_1(-k)+\cdots+d_kg_{k-1}(-k)+(-1)^kd_k
\end{eqnarray*}
なので, $ F(-k) $ が整数であることあわせて, $ d_k $ が整数である.
よって $ d_i\ (0\leqq i\leqq n, 但し d_n\ne 0) $ が整数であることが示された.
※ 参考問題:
2008年 東工大AOI−2