2017年入試問題研究に戻る京大特色4番解答
(1) 実数 $ x $ に対して $ [x] $ で $ x $ を超えない最大の整数を表す. つまり $ [x] \leqq x< [x]+1 $ となる整数を表す. したがって \[ x-1< [x]\leqq x \] が成り立つ. 領域 $ D_n $ に属し,かつ直線 $ x=k\ (0\leqq k \leqq n-1) $ 上にある格子点の個数は, \[ \left[\dfrac{k}{\sqrt{5}} \right]+1 \] である.したがって \[ S_n=\sum_{k=0}^{n-1}\left(\left[\dfrac{k}{\sqrt{5}} \right]+1 \right) \] となる.これから \[ \sum_{k=0}^{n-1}\dfrac{k}{\sqrt{5}}< S_n\leqq \sum_{k=0}^{n-1}\left(\dfrac{k}{\sqrt{5}}+1 \right) \] が成り立つ.これを計算して \[ \dfrac{n(n-1)\sqrt{5}}{10}< S_n\leqq \dfrac{n(n-1)\sqrt{5}}{10}+n \] よって \[ \dfrac{n(n-1)\sqrt{5}}{10n^2}< \dfrac{S_n}{n^2}\leqq \dfrac{n(n-1)\sqrt{5}}{10n^2}+\dfrac{1}{n} \] $ \displaystyle \lim_{n \to \infty}\dfrac{n(n-1)}{n^2}=1 $ なので,はさみうちの原理から \[ \lim_{n \to \infty}\dfrac{S_n}{n^2}=\dfrac{\sqrt{5}}{10} \] である.
(2) $ D_n $ 内の格子点に対して,その点を左下の頂点にもつ1辺1の正方形を対応させると, $ S_n $ の値は,対応する正方形の面積の和になる. $ S_9 $ は図の太線で囲まれた図形の面積である. これに対して $ \dfrac{\sqrt{5}n^2}{10} $ は \[ 0\leqq x \leqq n,\ 0\leqq y,\ \sqrt{5}y\leqq x \] で定まる領域,つまり $ D_{n+1} $ の面積である.
したがって, $ S_n $ は $ D_{n+1} $ の面積から, 対応する正方形の $ D_{n+1} $ の外にある部分の面積を加え, 内にある面積を減じた値である.
図のように $ x $ 座標が $ k $ から $ k+4 $ までの間を考える. 直線 $ l:\sqrt{5}y=x $ が,そこに含まれる格子点の状態で分けると, $ l_1 $ から $ l_4 $ のいずれかである. それぞれの直線が, $ x $ 座標が $ k $ で,4つの状態のすべてに含まれる左下の格子点から, $ y $ 軸方向に $ s $ 平行移動しているとする.
直線 $ l $ は $ \sqrt{5} $ が無理数であることより,原点以外の格子点は通らない. それを考え, $ s $ の範囲を確定し,この区間内で, 該当正方形から直線で囲まれる領域の面積を引いた値を $ A $ とする. これは該当する正方形の個数から, 対応する台形の面積 \[ \dfrac{1}{2}\times\dfrac{4}{\sqrt{5}}\times 4+4s=\dfrac{8}{\sqrt{5}}+4s \] を引けばよい. \[ \begin{array}{|c|c|c|c|c|} \hline 直線の状態&格子点の状態 & sの範囲 & A & A の下の範囲\\ \hline l_1&0< s,\ s+\dfrac{2}{\sqrt{5}}< 1 &0< s< 1-\dfrac{2}{\sqrt{5}}&5-\left(\dfrac{8}{\sqrt{5}}+4s \right)&1< A\\ \hline l_2&s+\dfrac{1}{\sqrt{5}}< 1,\ 2< s+\dfrac{2}{\sqrt{5}} &1-\dfrac{2}{\sqrt{5}}< s< 1-\dfrac{1}{\sqrt{5}}&6-\left(\dfrac{8}{\sqrt{5}}+4s\right)&2-\dfrac{4}{\sqrt{5}}< A\\ \hline l_3&1< s+\dfrac{1}{\sqrt{5}},\ s+\dfrac{3}{\sqrt{5}}< 2 &1-\dfrac{1}{\sqrt{5}}< s< 1-\dfrac{3}{\sqrt{5}}&7-\left(\dfrac{8}{\sqrt{5}}+4s\right)&3+\dfrac{4}{\sqrt{5}}< A\\ \hline l_4&2< s+\dfrac{3}{\sqrt{5}},\ s< 1 &1-\dfrac{3}{\sqrt{5}}< s< 1&8-\left(\dfrac{8}{\sqrt{5}}+4s\right)&4-\dfrac{8}{\sqrt{5}}< A\\ \hline \end{array} \] となる.したがっていずれの場合でも \[ A > 2-\dfrac{4}{\sqrt{5}}=4\left(\dfrac{1}{2}-\dfrac{1}{\sqrt{5}} \right) > 0 \] である. $ k=0 $ でもこれが成り立つので, \[ S_{4n}- \dfrac{\sqrt{5}(4n)^2}{10} > 4n\left(\dfrac{1}{2}-\dfrac{1}{\sqrt{5}} \right) \] が成り立つ. \[ \lim_{n \to \infty}\left(S_{4n}- \dfrac{\sqrt{5}(4n)^2}{10}\right)=+\infty \] となり,条件を満たす定数 $ C $ は存在しない.